他虐とは、「(ある人による)他の人への虐め」と本記事で定義します。
~前回までのあらすじ~
~舞台裏~
- goo辞書
- コトバンク
- 岩波国語辞典
いずれの辞書でも、「他虐」は収録されていません(2022年7月)。
というわけで、「他虐」は造語っぽいですが、類似する言葉もないので、
よし、がんばるぞー!
では以下目次です。
「自虐」の意味とは?自分が加害者で被害者!
じ‐ぎゃく【自虐】 の解説
ソース:自虐(じぎゃく)の意味 – goo国語辞書 – 2022年7月16日閲覧。
自分で自分をいじめ苦しめること。「―趣味」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
じぎゃく【自虐】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
自分で自分を(必要以上に)責めさいなむこと。「―的」
以上をまとめると、
まるで地獄の様相を呈していますが、よくこれがお笑いネタの一ジャンルとして定着しましたね……。
さて、以上でおわかりのとおり、自虐は「自分⇒自分」の虐めです。
「他人⇒自分」の虐めは、たとえ自分が虐められていても、「自虐」ではありません。
「被虐」の意味とは?被害者が受けるイジメ!
ひ‐ぎゃく【被虐】 の解説
ソース:被虐(ひぎゃく)の意味 – goo国語辞書 – 2022年7月16日閲覧。
残虐な取り扱いを受けること。いじめられること。「―趣味」⇔加虐。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
ひぎゃく【被虐】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
他からしいたげられること。残酷な扱いを受けること。 ↔加虐。「―的な思想」「―性」
以上をまとめると、
……イジメ被害者やイジメ問題に取り組んでいる人は、「いじめ」とか「イジメ」とかカジュアル化していないで、事ある毎に上記をフルで主張したほうがいいのではないでしょうか。
さて、これで「他人⇒自分」の虐めもカバーできました。
また、被害者側に立つ場合の「他人⇒他人」の虐めもカバーできました。
「加虐」の意味とは?加害者が与えるイジメ!
か‐ぎゃく【加虐】 の解説
ソース:加虐(かぎゃく)の意味 – goo国語辞書 – 2022年7月16日閲覧。
むごいしうちを加えること。いじめ苦しめること。「―性愛」「―趣味」⇔被虐。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
かぎゃく【加虐】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
他をしいたげること。虐待を加えること。 ↔被虐。「―的な接し方」「―性」
以上をまとめると、
まさに暴虐の限りを尽くしていますが、おかげさまですべての虐めをカバーできそうです。
これで「自分⇒他人」の虐めもカバーできました。
加害者側に立った場合の「他人⇒他人」の虐めもカバーできました。
「被虐」と「加虐」は「自虐」を含むのでは?
- 自虐……「自分⇒自分」の虐め
- 被虐……「他人⇒自分」の虐め、被害者視点で「他人⇒他人」の虐め
- 加虐……「自分⇒他人」の虐め、加害者視点で「他人⇒他人」の虐め
これで全方位カバーできています。
しかし問題は、より厳密なターゲットの指定において、欠けている要素があります。
②「被虐」は、岩波国語辞典では「他から」と定義されていましたが、goo辞書では、
- 自虐……「自分⇒自分」の虐め
- 被虐……「自分⇒自分」の虐め、「他人⇒自分」の虐め、被害者視点で「他人⇒他人」の虐め
字面を見ても、「被虐」とは、「被害+虐め」です。
「被虐」からは、「自分から」なのか、「他人から」なのかは読み取れません。
自分から自分への虐めや被害はありえない、という想定なら、「自虐」や「自害」といった言葉や行為の存在と矛盾します。
- 自虐……「自分⇒自分」の虐め
- 加虐……「自分⇒自分」の虐め、「自分⇒他人」の虐め、加害者視点で「他人⇒他人」の虐め
「加虐」にしろ「被虐」にしろ、「自他⇒自他」の虐めは、「自分⇒自分」の虐めも含むのです。
もちろん、文脈によって矢印の発生源や方向性は判断できますが、文脈の一言で済むなら「自虐」という言葉も不要でしょう(「加虐」だけで対応可能)。
「他虐」の意味とは?「自虐」を除くイジメ!
- 他虐している……自分Aや他人Bが、別の他人Cを虐めている
- 他虐されている……自分Aや他人Bが、別の他人Cに虐められている
こうすれば、「自虐」だけを取り除いた、「自分⇒他人」「他人⇒自分」「他人⇒他人」の虐めを指定できます。
ただし、「自虐」と「他虐」は矛盾しません(「自虐かつ他虐」はありえます。飛び降り自殺で、他人を巻き込むことがあるように。しかしそのとき、「自虐」を一旦脇に置いて他者への攻撃性を指摘する際に、「他虐」が有効です)。
単に「他虐」という場合は、「(ある人による)他の人への虐め」で問題ありません(たとえば、②「自他ABが、別の他人Cに虐められている」は、換言すれば「ある人Cによる、他の人ABへの虐め」です)。
じ‐さつ【自殺】 の解説
ソース:自殺(じさつ)の意味 – goo国語辞書 – 2022年7月16日閲覧。
[名](スル)自分で自分の命を絶つこと。⇔他殺。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
じさつ【自殺】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
〘名・ス自〙自分で自分の命を絶つこと。 ↔他殺。
た‐さつ【他殺】 の解説
ソース:他殺(たさつ)の意味 – goo国語辞書 – 2022年7月16日閲覧。
他の人に殺されること。⇔自殺。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
たさつ【他殺】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
人手にかかって殺されること。 ↔自殺
こうして参考にしてみると、「自殺」や「他殺」は、ちゃんとターゲットを指定し合っています。
辞書的にも、「自殺⇔他殺」みたいに、お互いを補完し合っています。
それなのに、
- 自害⇔他害
- 自愛⇔他愛
- 自力⇔他力
- 自律⇔他律
- 自筆⇔他筆
- 自責⇔他責
- 自罰⇔他罰
- 自校⇔他校
- 自社⇔他社
- 自国⇔他国
ここに「自虐⇔他虐」を加えても、罰は当たりません。
というわけで、辞書を作っている人~~~~!!
「他虐」を加えましょう!!
まとめ:「他虐」の読み方は?使用例も解説!
- 「自虐」は「自分⇒自分」への虐めで、自分が加害者で被害者である
- 「被虐」と「加虐」も、「自分⇒自分」への虐めを含む可能性がある
- 「他虐」なら「自分⇒自分」は含まないし、「自虐」の補完になる!
以上です。
最後に、改めて「他虐」の意味と読み方と使用例を述べて終わります。
「他虐」の読み方は、「たぎゃく」です。
「自虐」が音読みであるように、「他虐」も音読みのほうが自然でしょう。
使用例は、佐藤二朗氏によるツイートを再利用します。
~「他虐」の実例~
~「他虐」の使用例その①~
~「他虐」の使用例その②~
このへんの理路については、詳しくは前回の記事を参照。
「自虐っぽい他虐」は、今後問題になりそうな気配があるので、需要あると思います!
以上、なお前回は「自爆テロ」という言葉も使用していますが、「他爆テロ」という言葉が存在しないことについては知りません(テロ組織とかに命令されて、身体に爆弾ぐるぐる巻きで特攻させられる人や行為が「他爆テロ」といえそうですが……怖すぎるので触れません)。
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