自発的隷従論(著:エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ、監修:西谷治、訳:川上浩嗣、出版社:ちくま学芸文庫2013年、原文1546年~1548年)を読みました。
日本では2021年10月末、衆議院選挙があり、引き続き与党となる自公政権が大勝しました。
この選挙結果を受けて、野党支持者の負け犬は、
といった炎上ツイートを始め、「愚民」とか「肉屋を支持するブタ」といった負け犬の遠吠えを連呼していました。
私にいわせれば、
なんですが、それはともかくとして。
あまりにもみなさん、ふわっと「愚か」とか「愚民」とかいっていますけど、
というわけで本記事では、『自発的隷従論』から、
- 圧政者の詐術(一)――遊戯
- 圧政者の詐術(二)――饗応
- 圧政者の詐術(三)――称号
- 圧政者の詐術(四)――自己演出
- 圧政者の詐術(五)――宗教心の利用
に基づいて、「愚民」を定義します。
では以下目次です。
愚民とは?「パンとサーカス」が政治よりも大事な愚者
さて、『自発的隷従論』より、「圧政者の詐術(一)――遊戯」の一部を抜粋しました。
古来より、「愚民」を嘲る言葉に、
という言葉があります。
愚民にはパンとサーカスを与えておけば、毎日ステーキを食って酒池肉林を愉しんでいる主人の奴隷にしても、文句をいわない。
現代風にいえば、テレビやインターネットやスマホゲームなどで、無駄な時間を過ごして満足した気になっている人たち……、
これが圧政者のやり方です。
だから、この圧政者のやり方に騙されているバカこそが、愚民です。
騙されているならまだしも、
などと、自ら進んで、「隷従」する人たち……こういう人たちのことを、「自発的隷従者」と呼ぶのでしょう。
そして推しのゲーム実況者に恋人が発覚したり、アイドルの結婚発表があったりしてから、自分の空っぽな人生に気づいて絶望する(そうした暇つぶしをよきものと認め、目の前を通り過ぎる下らない悦びに興じたのであり)……。
そうして無為に浪費した時間、みんなで政治に経済政策や結婚支援を求めていたら、人生は豊かだったのでは?
またこの章では、こうした耳の痛い言葉には耳を塞ぎ、聞き心地の良い言葉を並べる詐欺師に騙されるバカについても言及されています。
愚民とは?自分が搾取されている現実に気づかない奴隷
次に、『自発的隷従論』より、「圧政者の詐術(二)――饗応」の一部抜粋です。
「パンとサーカス」における、「パン」の部分といってもいいでしょう。
あるいは、「小銭」とあるように、「お金」といってもいい。
といってもいい。
たとえばコロナ禍にあえぐ現代日本では、経済支援策として、「特別定額給付金」10万円が国民のほとんどに支給されました(2020年)。
そして2021年11月現在も、主に非課税世帯や18歳未満を対象に、追加の給付が検討されています。
でも考えてみれば、
ましてや、「特別定額給付金」を与える国や与党に感謝を捧げるのは、愚かの極みです(圧政者が、小麦一袋、ぶどう酒一杯、小銭を少し、気前よく与えるだけで、「王様万歳!」という歓呼の声が聞こえてくるのだ)。
一部の日本人は、こうした隷従状態に対して、なぜか「我慢強い」とか「忍耐強い」とか美徳ぶって自画自賛する向きがありますが、
それって我慢強いんじゃなくて、ただ愚鈍なだけだよね。
愚民はいつだって、精神勝利に余念がありません。
愚民とは?肩書きや綺麗事にもれなく媚びる権威主義者
お次は、『自発的隷従論』より、「圧政者の詐術(三)――称号」の一部抜粋です。
一言でまとめれば、
です。
たとえば現代日本では、
- 東大卒(学歴)
- 政治家(職業)
- インフルエンサー(称号)
といった、愚民が聞けば反射的にひれ伏す「肩書き」がありますよね。
で、
もちろん、国民の生活を豊かにしてくれた東大卒や政治家やインフルエンサーはいるでしょう。
が、すべてではありませんよね。
- 東大卒(無職・引きこもり・生活保護受給者)
- 政治家(実績ゼロ・公約は嘘・汚職で手一杯)
- インフルエンサー(迷惑系・炎上系・犯罪者)
なども、ありふれています。
それなのに、
です。
また、「称号」とは、個人が冠するものに限りません。
- SDGs(持続可能な開発目標)
- LGBT(性的少数者)
- ポリティカル・コレクトネス(言葉狩り)
といった美辞麗句もまた、「称号」に分類されます。
なんでもかんでも、
- 環境・気候
- #BLM
- #KuToo
とか聞こえのいい言葉に酔っていれば、正義になるわけではありません。
それなのに、「称号」を印籠の如く振りかざすのが圧政者であり、圧政者の靴やポリコレ棒やSDGs棒を舐めるのが愚民なのです。
愚民とは?詐欺師の嘘や詐称に騙されている哀れなバカ
以上が、『自発的隷従論』より、「圧政者の詐術(四)――自己演出」の一部抜粋です。
そういえば最近、2021年11月、
※桃山学院大学社会学部は、2021年時点での偏差値でいえば42.5~45.0で、東京大学(偏差値67.5~72.5)とは月とすっぽんです(もちろん、ここで私がバカにしているのは「すっぽん」ではなく、「月を自称するすっぽん」です)。
ソース1:黒瀬深(旧:RAIE)氏の過去の経歴がすごいと話題に – Togetter – 2021年11月24日閲覧。
ソース2:「黒瀬深」運営者は20代男性!“ネトウヨの皇帝”は「僕のプロフィールは出さないように懇願します」と電話で繰り返した – Yahoo!ニュース – 2021年11月24日閲覧。
ソース3:桃山学院大学/偏差値・共テ得点率 – パスナビ – 2021年11月24日閲覧。
ソース4:東京大学/偏差値・共テ得点率 – パスナビ – 2021年11月24日閲覧。
ほかにも「黒瀬深」は、
- 安倍晋太郎(政治家、安倍晋三元首相の父)
- 三島由紀夫(東大卒、日本文学史上最高レベルの文豪)
などと師弟関係にあったと自称していました。
またあるときは、
- 「海外在住」
- 「投資家」
- 「収入は普通に億越え」
などを自称したりもしていました。
「称号」に騙されるならまだしも、「称号を自称しているだけのバカ」に騙されるなんて、それはもう愚かを通り越して「哀れ」ですらあります。
だから、ラ・ボエシはいいます。
愚民とは?盲人よりも現実が見えていないポンコツ信者
ラスト、『自発的隷従論』より、「圧政者の詐術(五)――宗教心の利用」の一部抜粋です。
といっています。
ぶっちゃけ無宗教者や、葬式のときだけ仏教徒になることが多い日本人には、あまりピンとこない内容かもしれません。
が、日本の政治団体でも、
- 公明党……支持母体は宗教法人「創価学会」
- 幸福実現党……支持母体は宗教法人「幸福の科学」
など、宗教を背景にした政党が有力な勢力を誇っていますよね(公明党にいたっては、自民党との連立与党です)。
そしてやはり、
- 創価学会の名誉会長、池田大作氏
- 幸福の科学の創始者、大川隆法氏
両氏については、よくわからないエピソードが流布されています。
たとえば池田大作氏については、「池田大作本仏論」という、池田大作氏こそが本仏(生き仏、如来、日蓮聖人の生まれ変わりなど)とする論があります。
また大川隆法氏にも、「大川隆法本尊論」と呼ぶべき、大川隆法氏こそが本尊(釈迦、孔子、イエス・キリストなどより上位の仏)とする持論があります。
公明党の書記長・委員長を務めた矢野絢也は、池田大作本仏論の説明として、「(学会内部で)当時会長だった池田大作は日蓮聖人の再誕で、本仏に等しい指導者という思想だ」としている[2]。さらに矢野によると、1975年前後に一部の学会首脳によって「池田大作本仏論」なる考え方が囁かれるようになったが、その頃は池田はあくまでも信者(学会)の中の最高指導者であり、そのような個人崇拝を真面目にとらえる組織ではなかった[2]。しかし、創価学会が日蓮正宗に破門された1991年以後に宗門に置き換わるべき本尊が必要になり、(名誉会長の)池田こそ生き仏だという思想が学会内で市民権を得て一気に浮上したとしている[2]。矢野は、その原因を、創価学会における池田大作の独裁、私物化と「天下を取る」という野望から始まっていると思えてならない、としている[8]。
ソース:池田大作本仏論 – Wikipedia – 2021年11月24日閲覧。
幸福の科学において「エル・カンターレ」は、「うるわしき光の国、地球」もしくは「地球の光」という意味を持つとされる言葉で地球神を表し、また、幸福の科学の本尊である[1][2][3]。また、幸福の科学の教義では、エル・カンターレの本体部分が地上に下生したのが、大川隆法とされていることから、幸福の科学総裁の大川隆法のことも示す[4]。幸福の科学の信者は、エル・カンターレを体現した「現成の仏陀(悟りたる者)」であるとして大川隆法を信仰している。 祈りの言葉では「主エル・カンターレ」という呼称が用いられる[5]。
ソース:エル・カンターレ – Wikipedia – 2021年11月24日閲覧。
まとめ:手っ取り早く愚民を脱出する方法!古典を読む
- 愚民とは、自分の実生活に関わる政治よりも、遊びや娯楽で時間を無駄にする怠け者
- 愚民とは、自分の財布に手を突っ込んでいる税金泥棒に媚び、飼い慣らされた貧乏人
- 愚民とは、自分に実益をもたらさないお偉いさんや、美辞麗句に酔わされる酔っ払い
- 愚民とは、自称皇帝といった荒唐無稽な詐欺師にすら、ころっと騙される哀れなバカ
- 愚民とは、自分たちの嘘を自分たちで盲信する、盲人よりも現実が見えていない信者
以上です。
これが『自発的隷従論』から読み解く、「愚民」の定義です。
最後に月並みですが、手っ取り早く愚民にならない方法を述べて終わります。
です。
じつは私は2021年10月の選挙前(つまり本書『自発的隷従論』を読む前)、「親ガチャ」にかこつけて本書と似たような趣旨の記事を書いていました。
みたいな記事でした。
親ガチャという言葉の意味や善し悪しについては前回述べましたが、安田尊@親ガチャを謳うブログ。「親ガチャ」という言葉の本質は、個人の努力では覆せない格差社会の指摘でした。安田尊@Questionを謳うブログ。でも強[…]
自分でいうのもなんですが、まるでこの記事、私が『自発的隷従論』の一部をパクって現代風に低俗にリメイクしたような内容です。
もちろん私はリメイクなどしていませんが(そもそも読書嫌いで無知な私は「自発的隷従論」という言葉さえ知りませんでしたが)、そう疑われても仕方がないと思ってドキドキしました。
なんてったって、『自発的隷従論』は、約500年前から読み継がれている古典です。
古典の影響力は広範囲に及んでいるため、古典を読まなくても、このようにしていずれは古典の内容に触れることになります。
だから別に、漫画やアニメやネットにうつつを抜かしていたって、(学ぶ気さえあれば)賢くなれます。
『自発的隷従論』自体、
- 古代ローマ
- 古代エジプト
- 古代ギリシア
- 古代ペルシア
- 古代アッシリア
といった、古典から学んだと考えられる時代を参照しています。
この差異は、明らかに、古典を読み込んできたか読み込んでいないかの差でしょう。
では、ラ・ボエシにはもう追いつけないとして、
- これから古典を読み込む自分
- これからも古典を読まない自分
さて、どちらが「愚民」でしょうか?
もちろん「論語読みの論語知らず」という言葉もあるとおり、古典を読み込んでいるだけのバカもいますが、それはそれ。
以上、ラ・ボエシ『自発的隷従論』より、「圧政者の詐術」から定義する「愚民」の解説でした!