お!バカんす家族(原題:『Vacation』、2015年のアメリカ映画、日本語吹替版)を観ました。
です。
観ようかどうか迷っている方は、さっさと観たほうがいいです。
本作は、私がまだ作品世界に入りきっていない段階から明らかに面白く、残り1時間は感想記事を書くことが前提の批評目線になっちゃうな~と少し残念がっていたところ、批評目線で観ると冒頭30分までの内容で本作の面白さを十分に説明できることに気づいて逆に残り時間はなんにも考えずに楽しめる純粋な鑑賞に戻れた映画です。
というわけで以下からは、本作『お!バカんす家族』の冒頭30分までの内容を重点的に、あらすじや感想を述べます(だいたい、この手のコメディ作品を最初から最後まで全部説明することほどナンセンスなことはありません)。
では以下目次です。
映画『お!バカんす家族』の簡単なあらすじと要約
本作の主人公一家、「グリズワルド家」の家族構成は以下のとおりです。
- パパ……ラスティ・グリズワルド(デビーの夫、格安航空会社のパイロット)
- ママ……デビー・グリズワルド(ラスティの妻、夫婦生活のマンネリが悩み)
- 長男……ジェームズ・グリズワルド(高校生ぐらい、弟にイジメられている)
- 次男……ケヴィン・グリズワルド(小学生ぐらい、あらゆる意味でクソガキ)
本作は原題の『Vacation』(長期休暇)が示すとおり、このグリズワルド家がまとまった連休を取り、
グリズワルド家がワリー・ワールドを目指すことになったきっかけは、友人夫婦との会話です。
友人のピーターソン一家を招いた食事会で、夫ラスティが離席した際、妻デビーとピーターソン夫人が、
と話しているのを、戻った夫ラスティがうしろで普通に聞いていました。
その夜、夫ラスティはノートパソコンを開き、過去に「丸太小屋」で撮った家族写真を見返します。
すると、最初の頃は笑顔だった妻デビーの表情が、年々曇っていることに気づいて衝撃を受けます。
それから夫ラスティは、自分の子ども時代の家族写真を見返して、楽しかったワリー・ワールドの思い出に飛びつきます。
そしてある日の朝、
みたいな次男ケヴィンのライン越えジョークをかわし、父ラスティはワリー・ワールドへ家族旅行へいくことを告げます。
しかし家族の反応はというと、一瞬「パリ旅行」を期待した妻デビーはやや不満そうだし、次男ケヴィンは、
と、パパ相手でも平気でラインを越えてくるし、台パンまでしてキレる。
しかも同じく乗り気ではない長男ジェームズが、「ヒッピーっぽい旅をしてアメリカの……真の姿を探りたい」と対案を出すと、次男ケヴィンはすぐさまジェームズの胴体と顔面をぶん殴り、
と、弟なのに兄を恫喝している。
もう終わりだよこの家族。
それでも一家の大黒柱ラスティはめげずに(っていうかすでにレンタカーの鍵持ってるし)、ワリー・ワールド行きを決定します。
そしてグリズワルド家は、旅の道中さまざまなライン越えトラブルに巻き込まれたり乗り越えたりしながら、家族愛を取り戻していくのでした。
映画『お!バカんす家族』の個人的なライン越え集
さて、以上でおわかりのとおり、本作『お!バカんす家族』は、個人的には越えちゃいけないラインを越えています。
というQ&Aが成立するとすれば、まさに本作はタブーに挑戦しています。
ここからはそんなタブーを小分けにして、
- 次男ケヴィンのエイズ差別とFワード級暴言
- 父ラスティと息子たちのLGBT差別ジョーク
- 父ラスティと次男ケヴィンの職業差別無線
- レンタカーのカーナビによる人種差別音声
- 小休憩!ピーターソン夫人から精神の神秘
- 妻デビーがビッチ時代に考案「イッキ競走」
をお送りします。
まず最初は、「あらすじ」でもご紹介した次男ケヴィンのライン越えジョークです。
次男ケヴィンのエイズ差別とFワード級暴言
上記は次男ケヴィンが、エイズもろとも長男ジェームズをいじった発言です。
普通にアウト寄りのアウトですよね。
なぜ当たり前のように病気をネタにして、しかも韻(「ジェイム」ズ⇒「エイズ」)まで踏んでいるのか……。
この次男ケヴィンくんは一家のなかでも特にチャレンジャーで、
みたいなFワード級の罵詈雑言を呼吸の如く吐きます。
もちろんそれだけではなく、開幕から下ネタがスタートラインといわんばかりに、長男ジェームズのアコースティックギターに落書きをします。
父ラスティと息子たちのLGBT差別ジョーク
上記は、次男ケヴィンが長男ジェームズのアコースティックギターした落書きです(しかも「今月3度目」)。
そして長男ジェームズは両親に泣きつき、次男ケヴィンは両親に呼び出されます。
が、そこはケヴィンの父親、ラスティも問題発言を連発します。
もう終わりだよこの家族。
いやマジで、このやりとりを「コメディ」として扱うのはやばすぎませんか?
ワレメがないと主張する長男ジェームズを無視して、ワレメがある体でからかい続ける様子なんて、まさに典型的なイジメですよね。
しかも兄弟間の軽口ならまだしも、父親まで一緒になって「からかうのはよくない」といいながら長男ジェームズをからかう光景は、もはや虐待です。
この「イジメ」や「虐待」を、「いじり」とか「お笑い」として扱うのは現代では絶対に問題視されるし、特に近年LGBTやジェンダー問題でお盛んなアメリカの映画ならなおさらでしょう。
つまりこれは昔の映画だからできる表現で、
普通に現代の映画だし。
でも冷静に考えれば、映画って殺人から薬物までネタにしているわけで、差別だけ特別問題視しようとした私がおかしかった。
客観的に見ても、2021年現在『Amazon Prime Video』を筆頭に各種VODで配信されている時点で、現代の先進的な価値観でも問題なしって判断はされているのでしょう。
それでも、このコントを子役含めて演じさせるの、セーフなんだ……ってメタ的な失笑は禁じえなかったけど。
ただオチで父ラスティが、”I Have A Vagina”に取り消し線を入れて、
に書き換えていたので、そういう意味ではジェンダー意識は高いのかもかもしれない。
でも父ラスティと次男ケヴィンの問題発言は、ジェンダー問題に留まりませんが。
父ラスティと次男ケヴィンの職業差別無線
上記は、グリズワルド家がレンタカーで旅行中、偶然同じ道路を走っていたトラックに向けた無線です。
子どもって好奇心旺盛だから、訊いちゃいけないことを平気で訊くよね……。
ただし次男ケヴィンくんの場合、純粋な好奇心というよりは、明らかに悪意が見え隠れしていますが……。
私も童心に返って、職業に貴賎があるとかないとか、そういうことを考えさせられます(口には出しませんが)。
でもグリズワルド家の場合、こういうライン越え思考も平気で口に出すし、妻デビーが止めるまで続きます。
しかも問題があるのは、この家族だけではありません。
レンタカーのカーナビによる人種差別音声
それはグリズワルド家がレンタカーで移動中、なぜかカーナビの言語設定が次々と外国語に切り替わります。
いや、マジで人種問題なるぞ?
しかし繰り返しになりますが、本作は現代の厳しい基準をクリアして全米に公開され、忠実に翻訳されて日本でも配信されています。
だから安心して笑えます(少なくともいまのところは)。
そしてたしかに現代の映画らしく、妻デビーのほうは友人のピーターソン夫人にInstagramの「いいね押してない問題」を指摘されるという一幕があります。
小休憩!インスタグラムを巡る精神の神秘
グリズワルド家の妻デビーは、友人のピーターソン夫人からInstagramの利用法について咎められていました。
いちいちインスタの「いいね」なんかを気にしている豆腐メンタルが、「いいね」しなかった相手を真正面から問い詰める鋼のメンタルも持っているんだ……という精神の神秘にニヤニヤできるシーンでした。
妻デビーがビッチ時代に考案「イッキ競走」
実際、夫ラスティもそう思っていたようです。
でも妻デビーは、家族旅行の途中で寄った出身大学で、
します。
嗚呼、次男ケヴィンの残念な言動は父親譲りだと思っていたら、母親おまえもか……。
しかもいまでは「ババア」になってしまった妻デビーは、しかし後輩のビッチにいいところを見せようとして、
と叫んで、大学で開催中の「イッキ競走(ピッチャーのビールを飲み干してから、障害コースを駆け抜けてタイムを競うチャリティ・レース。妻デビーが現役時代に考案)」に参加して無惨にもゲボゲボ吐き散らします。
そして次男ケヴィンくんは、じつの母デビーがゲロゲロ吐きまくって死にかけているのを見て、
と無邪気に目を輝かせますが、普通に死人が出るから絶対に真似しちゃダメ。
でもアホだから将来絶対に真似するんだろうな~……。
と思っていると、一家は車内に戻り、母デビーの死ぬほど後悔している顔(あるいは後悔もできないほど憔悴しきった顔)が映ってまだ29分!!
ここまで30分以内!!
お笑いはテンポだとよくいいますが、本当にテンポ良く小ネタが散りばめられた良作です。
まとめ:ノーマン・リーダスでテンションが上がる
- 映画『お!バカんす家族』は、一言でいえば「当たり」のコメディ映画
- 具体的には、きわどい小ネタが大量かつテンポ良く散りばめられた良作
- ちなみに、終盤ではある人物が正体を現し、それがノーマン・リーダス
以上です。
③「ちなみに、終盤ではある人物が正体を現し、それがノーマン・リーダス」で、本作30分以降の内容に触れてしまったので、少し補足を入れます。
まあ補足もなにも、普通にノーマン・リーダスが出てきたんですよね。
ノーマン・リーダスといえば、
です。
やっぱりコメディ作品って、いくら面白くても、終盤は笑い疲れたりしてダレると思うんですよね。
でもそこへきて、いきなりダリルがマジで見た目ダリルのまんまで出てきたから、マジでビックリしてテンションが上がりました。
『ウォーキング・デッド』や、ノーマン・リーダス好きの方はチェックして損はありません。
というわけで以下からは、本作の30分以降というか、本作の外にも少し触れる総評です。
評価: 5.0本作『お!バカんす家族』は、はっきりいってサイテーのコメディ映画です。
ラスティ「父さんがああなったのは、家族思いで絆を作ろうと頑張ったからだ。それは成功した。僕もおんなじ思いでいるんだ」
オードリー「ンッフフフハハハ、兄さんってアホね」
ラスティ「そっちこそ」
クラーク「シカゴ? ワリー・ワールドは?」
ラスティ「いやあ、いいんだもう……十分だ。ひどい旅だった」
クラーク「でもそれが家族旅行ってもんだぞ。投げ出しちゃダメだ」
ラスティ「やめてもいいさ。だって……大事なのは、旅の過程だ。ゴールじゃないだろ?」
クラーク「旅の過程が最低だからこそ、ゴールが輝くんだよ。家族をワリー・ワールドに連れていく夢は、絶対に諦めるな。私を見習え」
2作目……『ナショナル・ランプーンズ・ヨーロピアン・ヴァケーション』(原題:『National Lampoon’s European Vacation』、1985年)
3作目……『ナショナル・ランプーンズ・クリスマス・ヴァケーション』(原題:『National Lampoon’s Christmas Vacation』、1989年)
4作目……『ベガス・バケーション』(原題:『Vegas Vacation』、1997年)
5作目……『National Lampoon’s Christmas Vacation 2』(2003年、スピンオフ作品で日本語訳なし)
6作目……『お!バカんす家族』(原題:『Vacation』、2015年)
以上、映画『お!バカんす家族』の感想でした!