ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない(原題:『Nicht mein Tag』、2014年のドイツ映画、日本語字幕版)を観ました。
です。
「GTA」がゲーム『Grand Theft Auto』だとわかった方、GTAファンの方(特にコメディ寄りのイカれた登場人物やストーリー、「不審者と変質者ミッション」などが好きな方)は楽しめると思います。
一方で、特殊部隊が出動してくるようなド派手な銃撃戦や爆発やアクションはないので、戦闘狂の方からすると少し物足りないかもしれません。
私はストーリー&キャラクター重視なので、楽しめました。
なんといっても本作は、
です(じつはGTAの主人公たちもそうですよね)。
というわけで本記事では、『ノンストップ・バディ』のどのへんがGTAっぽいのかを解説します。
映画『ノンストップ・バディ』の簡単なあらすじと要約
本作は日本語版タイトルにあるとおり、2人の男性主人公、
- ティル・ライナース……銀行マン。仕事や夫婦生活に不満はあるが、家族を養うために頑張っている
- ナッポ……犯罪者。刑務所に3年服役後、ティルに融資を拒否されて、銀行強盗&ティルを誘拐する
によるバディものです。
「ストックホルム症候群」とは、犯罪被害者が、犯罪加害者に同情したり共感したり協力したりする心理状態のことです。
まさに本作の序盤では、この「ストックホルム症候群」的な友情が築かれます。
最初、2人の関係性は最悪でした。
ナッポに襲われたティルは、銃を突きつけられて車を運転させられて、逃走の手助けをするはめになりました。
さらに途中からティルは、車のトランクに押し込まれ、ナッポの運転で隠れ家へ。
しかしギターが、ティルをトランクから救出します。
ナッポは隠れ家での暇潰しに困り、ギターを持ち出してきて車のトランクを開けると、
それでティルは、ロックバンド「DONAR」(ドナー)の楽曲、『Sweet Dark Angel』(麗しき漆黒の天使)を弾きます。
ティルとナッポは、ギターに合わせて一緒に歌ったり、ナッポが自分のあだ名は「ニッポン」由来であると語ったり、お互いに家族のことを話したり、ウサギを仕留めて料理したり、
翌朝、徐々に狂ってきた慣れてきたティルは、ナッポへの反抗的な態度と、同時にナッポへの協力姿勢……反社会的な態度も示すようになります。
たとえばティルは、新しく逃走車が必要になったとき、ノリノリで他人の車を荒らして鍵のかかっていない車を発見したりします。
でもトランクに監禁されることは拒否したり、銃を突きつけられているのに街中で車のクラクションを連打したり、車窓から顔を出して、
と、発狂したみたいに叫んだりもします。
これでティルは要求を通すことに成功し、妻ミリアムに電話をかけますが、ミリアムの反応は鈍いものでした。
さらに隣で通話を聞いていたナッポからは、
と指摘されて、心中穏やかではありません。
そんなティルを連れて、ナッポは「68年式のマスタング・ファストバッグ」を手に入れるため、
しかし、「クルツ&ラング」は、カタギの中古車ディーラーではありませんでした。
ナッポはぼったくられそうになり、銃撃戦5秒前。
そこでティルが機転を利かせて、銀行マンの手腕で相手を黙らせ、その場を穏便に治めて「68年式のマスタング・ファストバッグ」を手に入れます。
もはやティルは、解放されるのを惜しむまでになりますが、家族の元へと帰るためにナッポと別れます。
時を同じくして、
しかし妻ミリアムの女友達イナは、「背徳感」に興奮するタイプの変態で、ほとんど盛りのついたメス犬でした。
それだけでは飽き足らず、イナはミリアムの「大人のおもちゃ」を発見すると、勝手に使ってオナニーまで始めます。
事後、イナがシャワーを浴びて、パートナーの男が寝室でパンツを穿いていると、
すると自分の妻ミリアムのベッドで、見知らぬ全裸の男が、いままさにパンツを穿こうとしている!!
もちろん妻の浮気現場を目撃したと思ったティルはブチギレ、イナのパートナーをボコボコにして、
と呼びかけながらシャワールームへと向かいます。
でもシャワールームにいるのは、妻の女友達イナです。
イナは全裸だし、使用済みの「大人のおもちゃ」もまだ洗っていないし、パニック状態でシャワールームと自分の口に鍵をかけて「大人のおもちゃ」を洗うしかありません。
だからティルは、自分の誤解に気づかないまま、ドアをバンバン叩いて不倫妻ミリアムに向けて怒鳴ります。
そう、ティルがロック・ギターを弾けたのは、元々ロッカーだったからでした。
でもティルは、妻ミリアムとの将来のために音楽は諦め、「普通の仕事」や「住宅ローン」を選び、「冴えない男」になりました。
ティルは、ひとしきり怒りをぶちまけたあと、自暴自棄になって家を出ます。
そこには愛車に乗るナッポがいて、ティルが「クルツ&ラング」で見せた腕を買って、仕事の話を持ちかけます。
ティルは仕事を請け負い、ナッポとその彼女ナディンとも合流します。
そして道中、ティルは「自分の人生を生きる」ために、
- 結婚式で酔って暴れて警察沙汰になって以来、断酒していたお酒をコンビニでダース買いして飲酒解禁
- 誘拐報道を知る客に救助されかけ、別の迷惑客のことを誘拐犯だと教えてボコボコに殴らせた隙に逃走
- アルバニア人との取引成立後、乾杯の席で酔って喧嘩を売って大暴れして、こっそり金まで盗んで逃走
といった暴走を始めます。
が、ティルは駅のホームで「She’s my sweet dark angel!」(彼女は僕の漆黒の麗しき天使!)と歌う一行を発見、オランダで「ドナー」のライブがあることを知ります。
そして車に戻っていたナッポが、恋人ナディンと今後の予定で揉めていると、
と、完全にクレイジーな顔をしたティルがかっ飛んできて車窓に張り付いてきて、ナッポたちのロマンス(痴話喧嘩)を邪魔します。
しかしナディンがティルに便乗したため、ナッポも仕方なく同伴。
それからティルたちは、
ここにきてようやく酔いが覚めるティルですが、ナッポからは愛想を尽かされ、見放されます。
ナッポはティルに、餞別代わりの銃だけ手渡すと、さっさと愛車で走り去りました。
ナッポは車内で、恋人ナディンに言い訳をします。
しかし助手席のナディンは、
と、そもそもの発端がナッポの銀行強盗にあると指摘し、ボロクソにディスってナッポをUターンさせます。
一方でティルは、酔いこそ覚めたものの、今度は別の意味で正気を失っており、
ナッポが話をつけ、ティルの妻ミリアムは無事に解放され、ティルがいる銀行へ。
しかし、ミリアムが銀行に駆けつけたところで、ティルは銃撃を受けて倒れます。
その後、ティルは一命を取り留めたものの、逮捕・起訴・有罪・実刑で刑務所へ。
ティルの刑期は、ナッポの証言により情状酌量(大幅に免除)され、3ヶ月間に。
そして3ヶ月後。
出所したティルは家族に出迎えられ、ティルのことを「強盗さん」と呼びながらも待っていてくれた家族の存在こそが、なによりも大切なのだと気づきます。
一方で、ナッポは恋人ナディンとの高飛びに成功しており、そこにはいませんでした。
しかし、スペインから差出人不明の贈り物やビデオメッセージがティルに届いており、
と、ナッポもまた、ティルを待っていることを告げて友情を示すのでした。
映画『ノンストップ・バディ』のGrand Theft Auto要素
GTAといえば車です。
ナッポは車好きで、フォード「68年式のマスタング・ファストバッグ」を愛車にします。
このマスタングは、いわゆる「マッスルカー」タイプの旧車で、GTAの世界でもお馴染みのモデルです(日本の街中で見かけることはほぼありません)。
そして「68年式のマスタング・ファストバッグ」を売るお店!!
もうこの名前が最高で、このまんまGTAのマップに表示されてもなんの違和感もない。
しかも「クルツ&ラング」は僻地にあって、廃車だらけのスクラップ工場みたいな敷地内に、いかにも「イベント用なのでレアカラーです」みたいな「68年式のマスタング・ファストバッグ」がぽつんと駐車されている。
もちろん一般人は近寄りがたい雰囲気で、事務所にはアメ車が好きそうなタトゥーを入れた所ジョージみたいなオーナーが座っている。
そして「ノッポ」と呼ばれる共同経営者はラッパーみたいなファッションをしていて、登場シーンではイーストコースト系のHIPHOPミュージック(The Beatnuts『Junkyard-Theme』feat. Juju)が流れる。
こういうゲーム的なバカっぽいキャラはほかにもいて、
このイナとナディンは2人とも現実では見かけないタイプの女性で、イナは困惑するパートナーにビンタまでして強引にセックスへと持ち込む。
ナディンは本記事の「あらすじ」でも述べたとおり、ティルを見捨てようとしたナッポ(銀行強盗までやるギャング崩れの犯罪者)相手に、
と、一歩も引かない姿勢で口論を吹っかけて、ティルとの友情を復活させる役目を負う。
GTAの「不審者と変質者」ミッションみたいにこうしたクレイジーなキャラがそこら中にいて、ティルたちがドライブ中に寄ったパーキングエリアでは、迷惑客と正義のヒーローになりたいおじさんが激突する。
でも正義おじが暴走したのは半分ティルのせいで、
マフィアに喧嘩を売るのはGTAでは当たり前だし、消火器だって武器として登場している。
それでティルが盗んだ金でなにをやるのかといえば、まずは身だしなみを整える。
こんなに共通点があるのに、GTAを連想するなというほうが無理でしょう。
というわけで本作『ノンストップ・バディ』は、ドイツの実写版GTAです。
ド派手なアクションや一点突破型の強い売りはないかもしれませんが、GTAのサブミッションをノンストップでクリアしていくような感覚を味わえる良作でした。
まとめ:序盤中盤終盤に隙がない優しめの犯罪コメディ
- 映画『ノンストップ・バディ』の印象は、ほとんどゲーム『Grand Theft Auto』
- キャラクターから小道具から世界観まで、全体的な雰囲気がいちいちGTAっぽい
- ストーリーもGTAのサブミッションを集めた感じで、全体的な調和に優れた良作
以上です。
以下総評!
評価: 5.0本作『ノンストップ・バディ』は、『Grand Theft Auto』的なクライム・コメディが売りの映画です。
ナッポ「でも この写真はいただけない」
ナッポ「俺とは大違いだ」
ナッポ「あんなババアを選ぶかよ」
ナッポ「車のエンブレムも消えてる」
ティル「それには理由が…」
ナッポ「代わりに言ってやる 何もかもウソだからだ」
ナッポ「俺は自力でカネを手に入れる」
ナッポ「せいぜい人をダマして 稼いでりゃいいさ」
ティル「すべて終わるのか」
ティル「辺りは真っ暗闇か それとも白く光ってるのか」
ティル「それとも天使に名前を 呼ばれるのかって」
ティル「それが分かるのは まだ先だ」
以上、映画『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』の感想でした!