【映画感想】『ヘレディタリー 継承』の恐怖は現実に継承される
- 2021年4月30日
- 2021年5月5日
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コッ。
本記事は、映画『ヘレディタリー 継承』の詳細なネタバレを含みます。ご注意ください。
映画『ヘレディタリー 継承』は日本人にもオススメ
映画『ヘレディタリー 継承』(原題:『Hereditary』、2018年のアメリカ映画、日本語字幕版)を観ました。
「悪魔崇拝」をテーマに、悪魔や呪いの犠牲となる家族を描いたホラー映画
です。
「悪魔」……ぶっちゃけ日本人にとってこの言葉は、(ダーク)ファンタジーであってホラーではありませんよね。
私が日本の心霊スポットに肝試しにいく場合でも、幽霊や心霊現象に期待(恐怖)はしても、「悪魔」にはなにも期待していません。
だから私も、『ヘレディタリー』の予備知識があったら、
悪魔×ホラー
がテーマの映画は観ていなかったかもしれません。
でも私は、予備知識なしでも平気で映画を観るタイプなので、観てしまいました。
すると「悪魔」は終盤までほとんど出てこないばかりか、
- 怪奇現象と執拗に首を狙ったグロシーン
- 不幸な家族と主演女優の迫真すぎる演技
- 現実でも鳴り響く印象的なクリッカー音
といった、普通に日本人ウケするホラー要素やサスペンス要素が散りばめられていて、十分楽しめました。
ただし、「悪魔」が存在感を増してくる終盤はちょっとアレでしたが……。
というわけで本記事では、映画『ヘレディタリー』の簡単なあらすじと、上記3点を中心に見所や感想を述べます。
では以下、簡単なあらすじからです。
映画『ヘレディタリー 継承』のあらすじとネタバレ
映画『ヘレディタリー 継承』の要約は、「悪魔崇拝」をテーマに、悪魔や呪いの犠牲となる家族を描いたホラー映画です。
ちなみに「継承」が続編にありがちなサブタイトルっぽさを醸し出していますが、これが第1作目です。
そもそもタイトルの「ヘレディタリー(Hereditary)」が、
遺伝性、親譲り、先祖代々
といった意味であり、上記を意訳して併記されたものが「継承」です。
ではなにを「継承」しているのかといえば、
悪魔
です。
本作で描かれる主人公一家は、
- 母……アニー
- 父……スティーブ
- 息子……ピーター(高校生)
- 娘……チャーリー(小中学生ぐらい)
- 母方の祖母(アニーの母)……エレン
以上で構成されます(以下、「祖母」や「母」といった表記は上記の家族構成に基づいて行います)。
物語は、一家と同居していた祖母エレンの死から幕を開けます。
じつはこの祖母エレンは、祖先から連なる悪魔崇拝者でした。
この一家の、祖母エレン⇒母アニーといった「母方の血筋」は、「悪魔崇拝の血筋」です。
ただし、母アニー以下は悪魔崇拝者ではなく、自分たちが悪魔崇拝の血脈であることも知りません。
たとえば母アニーが知っていたのは、自分の両親や親族が精神障害者や自殺者などのオンパレードで、自身も夢遊病を患うなど例外ではないということぐらいです。
その一方で、娘チャーリーは赤子の頃から、地獄の王「ペイモン」の宿主に選ばれていました。
この地獄の王「ペイモン」こそが、祖母エレンたちが代々崇拝し、「継承」してきた悪魔です。
つまり地獄の王、悪魔「ペイモン」は、自らを崇拝する血統の肉体に「継承」されたといえます。
もちろん「継承」の儀式を執り行なったのは、祖母エレンです。
が、それはいいんですが、ここでちょっとマヌケな事態が発生しています。
“召喚”
“地獄の王ペイモン”
儀式の完了後 定められた者の体に宿る
王は男 男の肉体が必要である
と、作中の書物で明らかになるように、悪魔「ペイモン」は男性です。
しかし娘チャーリーは、心も身体も女性です。
つまり男性の悪魔「ペイモン」が完全に降臨するには、男性の肉体が必要だったのに、
女体に「継承」されるという痛恨のミス。
もっとも、この失敗には理由があります。
祖母エレンが「人を操る」ことに気づいた(アニーの)夫スティーブが、家庭内で「不干渉ルール」を定めたためです。
この「不干渉ルール」によって、祖母エレンは一家の息子ピーターに干渉することが許されませんでした。
しかし「不干渉ルール」が制定されたのは、一家に息子ピーターが誕生したあと、娘チャーリーが誕生する前です。
したがって、「不干渉ルール」は特に息子ピーターには適用されましたが、娘チャーリーへの適用は曖昧になりました。
そこで祖母エレンは、一家の娘チャーリーに悪魔「ペイモン」の継承を行なったというわけです。
ただそうはいっても、
悪魔「ペイモン」の継承に男性の肉体が必要なことに変わりはないのに、女体を身代わりにして、いったいどうするつもりだったの……?
娘チャーリーに、「男の子になれ」と無茶ぶりをしてなんとかするつもりだった。
これが祖母エレンの作戦でした。
しかし、もちろん娘チャーリーは男の子にはなれませんでした。
そこで目をつけられたのが、やはり息子ピーターです。
なんとかして、娘チャーリーに中途半端に宿してしまった悪魔「ペイモン」を、息子ピーターに移し替えたい……!!
しかしその夢半ばで、祖母エレンは死亡。
遺志を引き継いだ「ペイモン」信者が、娘チャーリーの殺害および、悪魔「ペイモン」の解放を計画します。
この娘チャーリー殺害計画は、「呪い」によって息子ピーターの手で実行されるように仕組まれます。
こうして息子ピーターが運転する車に同乗していた娘チャーリーは、首を切断する事故に遭って死亡。
悪魔「ペイモン」が解放されます。
その後、息子ピーターは現実を受け入れられず、娘チャーリーの遺体を車に放置したまま寝込みます。
母アニーは、買い物のため車に乗ろうとして、娘チャーリーの腐った首なし死体を発見して発狂します。
さらに「ペイモン」信者は、娘チャーリーを亡くした母アニーの弱った心につけ込み、
霊能者
降霊術
などを騙って怪しい儀式に誘い込むなど暗躍。
こうして一家は、精神を病んだり呪われたり蝕まれたりして、母アニーと父スティーブンも死亡。
息子ピーターは、肉体から魂を追放され、
息子ピーターの抜け殻には、悪魔「ペイモン」が「継承」されます。
ペイモン万歳!
ペイモン万歳!
こうして「ペイモン」信者は、王の帰還を祝福するのでした。
めでたしめでたし。
映画『ヘレディタリー 継承』の見所と恐怖ポイント
と、「悪魔崇拝」がテーマの映画ですが、終盤までは幽霊や心霊現象系のホラー映画、あるいは精神疾患系のサスペンス映画として鑑賞できます。
まず悪魔の王「ペイモン」が、男性なのに「女体」に継承されてしまったせいで、作中のラストまで実体を持ちません。
しかも悪魔崇拝者の祖母エレンは開幕死亡、悪魔崇拝仲間のカルト信者は終盤まで正体を隠しています。
つまり終盤まで、
「悪魔」の気配は、影のように伏線が張られていくのみ
です。
さらに伏線は、精神疾患や心霊現象的なアプローチで張られます。
そのため、よっぽど注意して見ない限り、途中までは実質的にサスペンス系や超常現象系のホラーとして鑑賞できます。
また、
母アニーが自身の血筋を「悪魔崇拝」だと知らないために生じる、己の理不尽な境遇を呪う様は圧巻
です。
加えて、娘チャーリーに端を発する、
「首切り」連発で、グロシーン大好き層もカバー
しています。
というわけで以下からは、
- 執拗に首を狙うグロシーン
- 主演女優の迫真すぎる演技
- 現実でも鳴るクリッカー音
を軽く紹介していきましょう。
「首切り」にこだわりがあるグロシーンの数々
本作『ヘレディタリー 継承』の見所として、まずは「首切り」が挙げられます。
本作では、そこそこの数の首が落ちます。
そんな首切りの火蓋を切るのが、娘チャーリーによる、
ハトの、
首切り
です。
ハサミでハトの首をチョキチョキ切り刻んで、チョキンッ、という生々しいハサミの音が聞こえると同時に、ハトの首がもげます。
娘チャーリーには、不完全ながらも悪魔「ペイモン」が宿っているので、そういう行動に駆られます。
まあでも、ハトの首切りぐらいは別に、ホラー映画を嗜む人間であればそんなにグロくもエグくも感じないでしょう。
ただそのあと、
娘チャーリー自身も、走行中の車窓から顔を出して、顔面が電柱に激突して首がもげます。
しかも首が落ちたあと、ぐちゃぐちゃに潰れた顔面が地面に放置されて、腐ってアリの集団にたかられているところがアップで映されます。
このグロシーンには、きっとグロテスク愛好家の方々も及第点を出せるはずです。
私は特にグロシーン大好き人間ではありませんが、グロ耐性は高いタイプで、その私からすると目を背けるほどではないけどまあまあ気持ち悪かったです。
個人的には、『ヘレディタリー』のなかで一番のグロシーンでした。
アニーの呪われた人生と主演女優の高い演技力
次に挙げる本作『ヘレディタリー 継承』の見所は、母アニーの呪われた人生です。
母アニーは、「悪魔崇拝」の血筋ですが、自身はそのことを知らずに生きてきました。
ただ、悪魔崇拝者である一家の祖母(アニーの母)エレンの悪影響だけは、しっかりと受けて育っています。
そして「悪魔崇拝」の悪影響は、エレン自身にも、その周囲にも蔓延していました。
- アニーの母エレン……解離性同一性障害
- アニーの父……妄想性の鬱病、餓死
- アニーの兄チャールズ……統合失調症、首吊り自殺
さらに自殺したチャールズの遺書には、
母さんが僕の中に何者かを招き入れた
との告発があり、自殺の原因がエレンであることを示唆しています。
もちろん「何者か」というのは、悪魔「ペイモン」のことでしょう。
エレンは、孫のチャーリーやピーターの前に、自分の息子チャールズに悪魔を「継承」させようとして失敗、自殺に追い込んでいます。
アニーが育ったのは、こんな最悪な家庭環境です。
そしてアニー自身、夢遊病や幻覚などの精神障害を発症し、
息子ピーターが眠っているベッドに、シンナーをぶまけてマッチで火をつけて燃やそうとする
などしています。
しかしこの夢遊病と放火は、アニーが悪魔「ペイモン」の依り代となりえる息子ピーターを、無意識的に拒んでいたとも解釈できます(アニーは、息子ピーターを産むことが「不安」で、「流産」すら試しています)。
仮にそうでなくても、こんな悪魔崇拝×精神疾患の館みたいな家庭で育てば、精神障害に至るのもうなずけます。
と、解釈したり納得したりできるのは、私が神視点の観客だからです。
アニー視点でいえば、自分が「悪魔崇拝」の血筋であることも知らず、自分や家族は精神障害者や異常な死者ばかりで、
さらにはアニーの娘チャーリーまで、「事故」で腐った首なし死体になる。
その「事故」は本当は事故ではなく、悪魔崇拝者による「呪い」です。
でもアニー視点では、そんな「呪い」など知る由もない。
なにも知らないまま、アニーは娘チャーリーの腐った首なし死体の第一発見者になる。
このまま死にたい……!
耐えられない……!
どうか死なせて……!
と、母アニーが泣き叫びながら発狂するのもうなずけます。
自分の不幸も不遇も不運も、なにひとつ説明できない母アニー。
なにも知らないから、なにひとつ納得することができない人生。
私はどんな物事からでも成功哲学や教訓を得るのが趣味ですが、
無知は罪なり
という格言を思いだします。
そしてこの素晴らしく不幸な母アニーは、女優さんの演技力なくして語れません。
演じたのは、トニ・コレット(Toni Collette)です。
映画『シックス・センス』における、霊が見える少年の母親役などで有名ですが、日本での知名度はそんなにないかもしれません。
ただ、演技力はガチで高いので、映画『ヘレディタリー』は、
字幕版で観ることを強くオススメ
します。
私は日本語吹替版もちょろっと観ましたが、トニ・コレットの作るシリアスな表情が上手すぎて、声優さんの声が追いついていません。
これは声優さんの演技力に問題があるのではなく、「吹替」という構造上の問題です。
つまり実写映画の「吹替」では通常、表情や唇の動きと、発声の不一致が発生します。
(普段は気にならない)その不一致が気になるレベルで、元の演技が迫真すぎるのです。
ちなみに私自身の趣向は、字幕でも吹替でもどっちでもいけて、選べる場合は吹替版を視聴することが多いです。
その私が見比べても、『ヘレディタリー』は演技的な満足度も総合的な満足度も、字幕版のほうが高いと断言できます。
「コッ。」の恐怖イメージは現実に共有できる
そして映画『ヘレディタリー 継承』最大の見所は、音を使ったホラー演出です。
音といっても、ジャンプスケア(静かな場面でいきなりデカい音を出してビビらせてくるような三流ドッキリホラー映画の音)ではありません。
ただ、『ヘレディタリー』自体はB級ホラー映画ですし、ジャンプスケアも使われているんですが……それがメインではありません。
本作に登場する娘チャーリーは、唇を少し開けた状態で口蓋(口内上側の粘膜)に舌を吸着させて離したときに鳴るような、
コッ。
という吸着音(クリッカー音)を出す癖を持っています。
この吸着音自体は、小気味が良いともいえますし、気味が悪いともいえます。
でも『ヘレディタリー』においては、不気味な音です。
この吸着音は、初めは娘チャーリーの癖かと思われましたが、娘チャーリーの死後も、
コッ。
という音が、幻聴(もしくは実際に鳴っている音)として繰り返し聞こえてきます。
それはこの吸着音が、じつは悪魔「ペイモン」を象徴する音だからです。
娘チャーリーが吸着音を口ずさんでいたのも、その身に悪魔「ペイモン」を宿していたからです。
さらに悪魔抜きにしても、
コッ。
にはネガティブなイメージが植えつけられています。
それは娘チャーリーの、口や喉に付きまとうネガティブなイメージとリンクしています。
娘チャーリーは、呼吸器系にアレルギー疾患を持っていました。
その呼吸器系のアレルギーが、娘チャーリーの間接的な死因にもなっています。
- 娘チャーリーは、嫌がったにもかかわらず母アニーに強要されて、
- 兄ピーターに連れられ、高校生が集まるパーティに参加させられ、
- ナッツが入ったケーキを食べてしまい、ナッツアレルギーを発症、
- 「息が苦しい」、「喉が晴れ上がった感じ」と兄ピーターに訴え、
- 兄ピーターが運転する車に乗り、猛スピードで病院に向かう途中、
- 呼吸困難でもがき苦しみ、酸素を求めて車窓から顔を出した結果、
- 娘チャーリーの顔面は、電柱に正面衝突して首ごと吹き飛びます。
このように、娘チャーリーの口や喉には、ネガティブなイメージが付きまとっています。
その負のイメージをまとった口から発せられる、
コッ。
という音にも、当然ネガティブなイメージが紐付けられます。
そして視聴者は、この「コッ」という音が鳴るたびに、不気味で不愉快な気持ちにさせられます。
いわゆる「パブロフの犬」(条件反射)に近い状態です。
私はこういう、音と恐怖をちゃんと(ジャンプスケアのような最初から不愉快な騒音をまき散らすドッキリではなく)丁寧に紐付けるホラー映画は好きです。
ホラー映画『着信アリ2』でも同じような好感を持ったことを思いだしました(着信音部分だけではなく)。
『着信アリ2』では飴玉が使われていましたが、こういう小道具と恐怖を結びつける演出は、日本人にも刺さるはずです。
そしてなにより、『ヘレディタリー』の優れた点は、
コッ。
この音が、自分でも容易に出せる点です。
唇を少し開け、舌を口内の粘膜の上側にくっつけて、少し弾ませるように離せば鳴らせるので試してみてください。
『ヘレディタリー』を観た人間同士であれば、この「コッ」だけで気味の悪さを共有できる。
映画で得た恐怖の感覚を現実に持ってくることができるという点で、『ヘレディタリー』は面白い映画だといえます。
まとめ:「コッ。」と鳴らして友達をビビらせよう!
それではおさらいも兼ねて、ここまでの要点を3点でまとめます。
- 映画『ヘレディタリー 継承』は、「悪魔崇拝」がテーマのホラー映画
- ただ終盤までは「悪魔」の存在感が薄く、心霊現象メインでも楽しめる
- グロ、演技、演出と三拍子揃った作品で、特に音の演出はレベルが高い
以上です。
それでは、日本人的にオチはちょっと微妙だよな~という点に少し触れつつ、総評といきましょう。
総評!
コッ。
安田尊@スタンディングオベーションを謳うブログ。
評価: 5.0映画『ヘレディタリー 継承』は、口と舌だけで簡単に鳴らせる音に恐怖のイメージを持たせることに成功したホラー映画です。
コッ。
この吸着音(クリッカー音)がそれです。
「コッ。」は自分でも簡単に鳴らせるため、『ヘレディタリー』を観たあとはついつい鳴らしてしまいませんか?
そして「コッ。」と鳴らしてしまってから、少し嫌な気持ちになる。
矛盾しているようですが、この「少し嫌な気持ち」を楽しめるなら、『ヘレディタリー』は最高の映画です。
友だちに『ヘレディタリー』を視聴させたあと、電話やそばで「コッ。」と鳴らして反応を見て遊ぶのも楽しいでしょう(性格は最悪ですが)。
ここまでで、十分元が取れています。
だから終盤、残り30分ぐらいの、「そうはならんやろ」的な物理法則の乱れ呪いも、笑顔で見守れます。
たとえば母アニーが、娘チャーリーの遺した奇怪なノートを焼却処分しようとして燃やしたら、母アニーの服まで燃えだして、ノートの火を消したら服も鎮火したとき、「そうはならんやろ」と思います。
あるいはこの呪いが、「娘チャーリーの遺品ノートを燃やすと、燃やした人間も燃える」という法則だと思ったら、2度目のときは母アニーがノートを燃やしたのに、なぜか父スティーブンが燃えて「そうはならんやろ」と思います。
さらにいえば、悪魔に取り憑かれたような狂った母アニーが、めちゃくちゃ意表を突いて息子ピーターを襲ったのに、息子ピーターがプロアスリート並みの反射神経でかわして海外とかによくある天井から梯子を下ろして上がるタイプの屋根裏に逃げ込んで梯子を収納して鍵を閉めて入り口を塞いだとき、母アニーはスパイダーマンみたいに閉ざされた天井に張り付いてガンガンガンガンガンガンガンガン頭突きでノックをしていたのに、しばらくすると急に静かになって音沙汰がなくなったと思ったら、普通に壁抜けして屋根裏に出現して宙に浮きながらギャグみたいなスピードで自分の首を切るパフォーマンスを始めたとき、「なんでそこにおんねん」と思います(あと一緒にそこにいて少し前から存在をアピールしてくる全裸の「ペイモン」信者な)。
でも、いいんです。
私はホラー映画を観るとき、夜とか深夜に部屋の電気を消して真っ暗な部屋で観るんですが、
(あ、これもう怖くならないやつだ……電気つけよっかな……でももうすぐ終わるのにここで電気をつけたら負けな気がするよな~……)
とか、終盤は考え始めていましたが、いいんです。
途中までは十分怖かったから!
ちなみに私の鑑賞スタイルだと、背後が気になる演出があるとより楽しめます。
『ヘレディタリー』でいえば、息子ピーターがベッドで寝ているとき、娘チャーリーの亡霊みたいな姿が見えて、首が落ちるようにボールが落ちて、そのあと背後から正体不明の両手に頭を掴まれて首を締められたシーン。
こういうシーンがあると、背後が気になってとてもいいですね。
『ヘレディタリー』は、個人的にはビビって途中で電気をつけたくなるほど徹頭徹尾怖い映画ではなかったので、部屋を真っ暗にして観るホラー映画としては丁度いい難易度だと思います。
以上、映画『ヘレディタリー 継承』の感想でした。