ザ・ファブル(著:南勝久)第1部完結までの全22巻を読みました。
です。
そう、釣り用語の「キャッチ&リリース」のリリースです。
となれば普通、表社会に生きる人々からすれば迷惑極まりないリリースだといえるでしょう。
しかし本作では、どちらかといえば「ファブル」が、表社会と裏社会の狭間に潜む中途半端な人たち(ヤクザや半グレや犯罪者)に迷惑をかけられまくります。
そして俗世のトラブルに巻き込まれた「ファブル」は、
ということわざの如く、中途半端な人たちを浄化しながら表社会デビューを果たしていく……というストーリーです。
本記事では、この『ザ・ファブル』について、
- 漫画『ザ・ファブル』は殺し屋が主人公の日常系漫画!
- 主人公の相棒の佐藤ヨウコはマイルドヤンキー可愛い!
- クズはだいたい死亡する世界観なので安心して読める!
の3ポイント+αで感想と解説を述べます。
では以下目次です。
漫画『ザ・ファブル』の簡単なあらすじとネタバレ
本記事冒頭でもご紹介したとおり、漫画『ザ・ファブル』は、
です。
これは「ファブル」が所属する組織のボス直々に、時代の流れを読んで決定したことでした。
「ファブル」はたしかに組織の、そして殺し屋の最高傑作です。
ただし、
なのです。
現代は卓越した身体能力だとか、反射神経だとか、あるいは超人的な直感だとか勘だとかに頼って戦う時代ではなくなりつつあります。
- 街中の監視カメラ
- だれもが持っているスマホのカメラ
- Nシステム(自動車ナンバー自動読取装置)
- DNA鑑定
- ナノテクノロジー
……いまはまだ「ファブル」も通用していますが、そのうち組織には用無しになるだろう、とボスは考えました。
裏社会における「用無し」とは、つまり抹殺です。
しかし「ファブル」は、ボス直系のボスご自慢の、
です。
情があります。
愛着があります。
用無しになるからといって、闇に葬り去るのはあまりにも惜しい……。
そこでボスは、「ファブル」を社会に還元することにしました。
もしも「ファブル」が一般社会で「ふつう」の暮らしを体験してみて、殺しを封印して表社会になじめるようなら、
と命じるために。
しかし「ファブル」に、一般社会のしかも人助けの適性があるかどうかは容易には判断できません。
まず第一に、「ファブル」にはサヴァン症候群のような発達障害の疑いがあります。
加えて「ファブル」は組織にキャッチされてからというもの、長らく殺し屋としての英才教育を施されてきました。
その弊害として、「ファブル」には一般社会の常識が欠如しています。
たとえるなら、
です。
そしてずっと家で飼っていたペットをいきなり野生に放つわけにはいかないように、「ファブル」もいきなり表社会に放り出すわけにはいきません。
いわば試用期間が必要です。
そこでボスは、「ファブル」とその妹役の相棒を、付き合いのある暴力団「真黒組」に預けます。
- 暴力団「真黒組」の内部抗争、
- フリーの殺し屋たちとの戦闘、
- 盗撮魔や詐欺組織との攻防……
挙げ句の果てに、別の「ファブル」を交えた乱闘にも突入します。
そう、じつは「ファブル」は主人公固有のコードネームではありません。
というか、主人公にコードネームはありません。
主人公は表社会デビューを果たす際に「佐藤アキラ」という偽名を与えられますが、「ファブル」はそれとは別です。
「ファブル」の意味は「寓話」「皮肉な物語」
と、作中で言及されています。
裏社会のなかでも「寓話」扱いされてきた都市伝説的な殺し屋組織「ファブル」。
そして殺し屋組織「ファブル」に所属する殺し屋「ファブル」。
少しややこしいですが、組織にも彼らにも名前がないため、どちらも勝手に「ファブル」と呼ばれて噂されている存在です。
したがって主人公はもちろん、
- 組織も「ファブル」
- ボスも「ファブル」
- 同門も「ファブル」
です。
しかし本作のタイトル『ザ・ファブル』は、「ファブル」の最高傑作である主人公だけを指しています。
そして『ザ・ファブル』第1部(全22巻)は、主人公がさまざまなトラブルを乗り越え、
とボスから認められ、さっそく山の頂上付近でレイプ魔を待ち伏せしているところで完結します。
『ザ・ファブル』は殺し屋が主人公の日常系漫画!
さて、それでは漫画『ザ・ファブル』で私が魅力に感じた部分を紹介していきましょう。
本記事冒頭やあらすじでも触れましたが、『ザ・ファブル』の主人公、佐藤アキラ(偽名)はプロ中のプロの殺し屋です。
その殺し屋がいきなり表社会で日常生活を送ることになった……というコンセプトであるため、日常のどうでもいいエピソードが丁寧に描かれます。
そしてときにはふたり揃って、
- バーで飲んだり、
- ペットを飼ったり、
- サンマを焼いたり、
しています。
佐藤アキラが時給800円(その土地の最低賃金未満)で零細デザイン会社のブラックバイトを始めたかと思えば、バイト先のオッサン社長は職場に住み込んでいて、佐藤アキラが出勤すると毎朝の歯磨きをしている。
ほかの次から次へと大事件が勃発してめまぐるしく展開していくような作品では削られるような、日常のちょっとした描写が丁寧に描かれている。
この芸の細かい描写こそが漫画『ザ・ファブル』の魅力です。
もちろんゆるふわな日常系ではないため、合間合間に、
- 主人公が半グレをけしかけられたり、
- ヤクザの内部抗争が勃発していたり、
- 死体袋の処理作業が発生していたり、
裏社会の日常も描かれます。
佐藤アキラのバイト先関連でいっても、
- 元グラビアアイドルの訳ありヒロインがいたり、
- そのヒロインを狙っている盗撮魔がいたり、
- その盗撮魔を狙っている詐欺組織がいたり、
わりとめちゃくちゃな事件が起きます。
しかし日常的な空気感があるため、それこそ休日にお酒でも呑みながら、ゆったりと読める漫画だといえるでしょう。
作品世界に奥行きを与える濃い顔芸にも注目!
ところで『ザ・ファブル』の芸が細かい描写といえば、
も注目ポイントです。
『ザ・ファブル』は元々リアル路線の作風で、キャラクターの描き分けや表現がしっかりしています。
そのため、登場人物たちはとても表情豊かです。
主人公からして自己マインドコントロールの「スイッチ」を入れるためのルーティン(決まった動作)で変顔になっていまいますし、
じつに多彩な顔芸を披露してくれます。
流し読みをしていると気づかないかもしれませんが、目の前で殺人を目撃したヤクザ(高橋)のびびり散らかしたアホ面はかなり笑えます。
しかし同じアホ面でも、目や口を半開きにしたまま酔い潰れて眠っているヨウコはめちゃくちゃ可愛いです。
こうした芸の細かさや画力・表現力の高さが、『ザ・ファブル』の世界に奥行きを与えているのは間違いないでしょう。
主人公の相棒のヨウコはマイルドヤンキー可愛い!
佐藤ヨウコ(偽名)は、茶髪ロングの20代女性で、ドンキにいけば会えそうな高卒マイルドヤンキー風のファッションを好む酒豪(ドランククイーン)です。
この佐藤ヨウコもまた「ファブル」であり、組織では主人公と組んでドライバー(運転手)役を務めていました。
ドライバー役といっても、「ファブル」の訓練は受けているため、「ファブル」以外の殺し屋や地下格闘技の男性チャンピオン程度であれば秒殺できる実力を秘めています。
が、殺しの経験がなく、実戦経験に乏しいという致命的な弱点もあります。
その経験不足からくるやらかしで、格上~同格の殺し屋はもちろん、状況次第では格下の殺し屋にも出し抜かれるところが可愛い!
か弱さは可愛さです。
佐藤ヨウコ自身、自分より100倍強い佐藤アキラへの恋心を尋ねられて、
と考えているとおりです。
でももっと可愛いのは、
です。
すべての女性に取り入れてほしい、このダメなライフスタイル。
ちなみにこのスタイルでアディダスのウェアを購入する場合は、ストリート系のアディダスオリジナルスから選ぶのがオススメです(アディダスの三角形っぽいロゴではなく、三つ葉っぽいロゴのほう。トレフォイルロゴ)。
しかし佐藤ヨウコも、ずっと部屋着で過ごしているわけではありません。
たとえばバーでアホな男を引っかけるときなどは、アホな男が好きそうな短いスカートを穿いたり、水商売風の格好をしたりします。
それもこれも佐藤ヨウコの趣味が関係しており、
という最悪な暇つぶしのためにオシャレをします。
そして引っかかったアホな男は、テキーラ20杯(20ショット)ぐらいなら余裕の佐藤ヨウコにテキーラ耐久レースを仕掛けられ、嘔吐に脱糞と散々な目に遭って救急車を呼ばれます。
殺し屋としては殺しの経験がない佐藤ヨウコですが、このままなら間違いなく急性アルコール中毒で人を殺すでしょう。
しかしそんな悪魔じみた彼女の所業も性格も、世の男性は許すはず。
笑い上戸でよく笑う彼女の笑顔を守るためだったら、世の男性は自分が犠牲になっても致し方ないと考える程度には可愛いから!!
『ザ・ファブル』のヒロインは、主人公と結婚する女性という意味では別にいます。
しかし可愛さでいえば、間違いなく佐藤ヨウコがメインヒロインです。
そして可愛ければ大抵のことは許されます。
たとえ深夜まで酒を飲み夕方まで寝る、オッサンの休日みたいな日々を送っていても、結局のところ可愛い子がやっていれば可愛いし許されるということが本作で証明されています。
主人公は殺さない殺し屋だがクズはだいたい死ぬ!
さて、前回の老害予防の記事でも言及しましたが、『ザ・ファブル』はクズがだいたい死ぬ漫画です。
老害が若者へのマウンティングに使いがちなワードとして、安田尊@目上を謳うブログ。目上というセリフがあります。人間、「目上」でマウントを取るようになったら老害の初期症状です。自分が老害になることを予防[…]
主人公は殺しを封印して以降、直接命は奪いませんが、なんやかんやあって火の粉を飛ばしてきたクズはだいたい死ぬことになります。
試しに主人公が「殺さない殺し屋」になって以降、作中で死亡した登場人物を羅列してみましょう。
- 傷害、強盗、強姦、借金など、殺人以外はほとんどやってる元レスラー
- 商売のためにヤクザから借りた金を踏み倒して別のヤクザのデリヘル事業を仕切っていた元ヤクザ社長
- 元グラビアアイドルに性的暴行を加えたヤクザ
- 目上の兄貴分を裏切りまくり殺人も犯したダブスタ老害ヤクザ
- 親の金を3年間で2億円近く使って豪遊していたボンボン
- フリーの殺し屋コンビ
- 元グラビアアイドルの部屋に盗撮器を仕掛けて強姦未遂にまで及んだボンボン
- 売春組織や詐欺組織を運営し殺人や死体遺棄にも手を染める犯罪者
- 詐欺組織で働いていた元ヤクザ
- 金のために自衛隊から殺し屋に転職しようとした若者
- ヤクザの組長(真黒組の4代目)
- ヤクザのボディガード
- 口が軽いヤクザ
- 女に酒飲ませて眠剤まぜて仲間でマワしてビデオ撮影もしっかりしてる半グレ地下格闘技コンビ
- 極道のタブーである親殺し(自分の親分を殺すこと)を殺し屋に依頼したヤクザの幹部
- 親殺しヤクザの軍門に降ったヤクザの幹部
- ヤクザから親殺しを請け負って実行した殺し屋
- 「ファブル」の幹部(山岡)
以上です。
見事なまでにクズしかいない。
まあ殺し屋やヤクザが中心の漫画なので、そもそもクズな登場人物が多いという事情はあります。
しかしそれにしても、裏社会の道理や倫理観で考えても、道を踏み外したクズが目立ちます。
上記のリストで(主人公側に対して)悪い人じゃないっぽい描写をされているのは、せいぜい⑪「ヤクザの組長(真黒組の4代目)」ぐらいでしょう。
象徴的なのは⑭「女に酒飲ませて眠剤まぜて仲間でマワしてビデオ撮影もしっかりしてる半グレ地下格闘技コンビ」に突きつけられるセリフです。
発言者は⑭「暇潰しのオモチャ」を用意させた⑱「ファブルの幹部(山岡)」です。
こうして半グレの片割れは暇潰しのオモチャ「スズムシ」として生きるはめになり、鬱状態に追い込まれた挙げ句、最期は射殺されます。
もう片方の半グレも、「暇潰しのオモチャ」を見繕った元殺し屋の武器商人「マツ」に、
と冥土の土産に聞かされた直後、撃ち殺されて山に埋められます。
そして⑱「ファブルの幹部」も、より本物の暗殺者に火の粉を飛ばしてしまったがために、最期は撃ち殺されます。
クズとクズがクズな揉め事を起こしてクズな末路を迎えている、といえばそれまでですが、
であると私は読み取りました。
その証拠に、主人公は殺しを封印して以降、「善」であり続けるためにひとりも殺しません。
そして第1部のラストで、主人公は人助けの旅に出ることを決意します。
本作で描かれているのは、陰鬱な裏社会です。
しかし同時に、クズたちのなかでもよりクズで不愉快な人間が死ぬことになる優しい世界でもあります。
決して爽やかな漫画であるとはいえませんが、やはりお酒でも呑みながら、安心してリラックスしながら読める漫画であるとはいえるでしょう。
まとめ:『ザ・ファブル』は第一部だけで面白い!
- 漫画『ザ・ファブル』は殺し屋が主人公の日常系漫画!
- 主人公の相棒の佐藤ヨウコはマイルドヤンキー可愛い!
- クズはだいたい死亡する世界観なので安心して読める!
以上です。
では総評!
評価: 5.0漫画『ザ・ファブル』は、全22巻をもって第1部完結、第2部は準備中です(2020年12月時点)。
以上、漫画『ザ・ファブル』を読んだ感想と解説でした。
THIS IS THE ANSWER.