苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」(著:森岡毅)を読みました。
本書「苦しかったときの話をしようか」は、
です。
したがって対象年齢は20歳~30歳前後の、就活や転職に悩める若者でしょうか。
内容はマーケティングやブランディングの手法を「自分」に応用するための方法論から、「人間は平等ではない」とするなどのそもそも論、成功哲学、
です。
たとえば本書において森岡毅氏は、人間を3種類に分類します。
- Tの人
- Cの人
- Lの人
です。
T、C、L、なんの略だかわかりますか?
答えは、
- Thinking(シンキング=思考力が強み)の人
- Communication(コミュニケーション=伝達力が強み)の人
- Leadership(リーダーシップ=統率力が強み)の人
です。
私はちょっとこういう、自分診断みたいなのが好きなのでここが一番面白かったです。
というわけで本記事では、主にTCL診断の概要と感想を述べます。
その前にもう少し詳細な著者紹介やあらすじ説明も入れますが、不要であれば飛ばしてください。
では以下目次です。
著者の森岡毅氏は元P&Gや元USJのマーケター
本記事冒頭でも述べたとおり、本書「苦しかったときの話をしようか」の著者は、
です。
以下に森岡毅氏の肩書きを一部抜粋しましょう。
- P&G「日本ヴィダルサスーン」ブランドマネージャー
- P&G「北米パンテーン」ブランドマネージャー
- P&G「ウエラジャパン」副代表
- USJチーフ・マーケティング・オフィサー
- USJ執行役員
- USJマーケティング本部長
もちろんP&GとかUSJとかというのは、みなさんが真っ先に思い浮かべるあの世界的大企業&超有名ブランドのことです。
もはや凡人である私には、「チーフ・マーケティング・オフィサー」と「マーケティング本部長」の違いすらよくわかりませんが、森岡毅氏のプロフィールには併記してあるため別々の役職なのでしょう。
でも一言でまとめますが、要するに、
であることがうかがえます。
そんな森岡毅氏は、現在ではマーケティングのエキスパート集団「株式会社 刀」を設立、代表取締役CEOに就任されています。
また執筆活動も盛んで、
- 『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』
- 『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』
- 『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』
- 『マーケティングとは「組織革命」である。 個人も会社も劇的に成長する森岡メソッド』
- 『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』
と、著作も多数あります。
本記事で扱う「苦しかったときの話をしようか」は、本記事執筆時点(2020年8月)時点で森岡毅氏の最新作となります。
「苦しかったときの話をしようか」のあらすじ
では本書「苦しかったときの話をしようか」のあらすじをご紹介しましょう。
本書には、
と、将来に悩む娘を問い詰めて論破してしまう父がいきなり登場します。
私もビックリしました。
「苦しかったときの話をしようか」と題しているからにはどんな苦労話を読ませてくれるんだろう……! とワクワクしていたら、いきなり娘を論破しているわけですからね。
と、私も一瞬混乱しかけましたが、しかしよくよく考えてみれば、娘を論破しなければならない父というのもなかなか「苦しかった」のは想像に難くありません。
そして娘思いの父は、
と考えたのでしょう。
父……つまり森岡毅氏は、娘のためにキャリア(職能)形成に関する「虎の巻(指南書)」をしたためます。
その「虎の巻」を私たち向けに編集(一人称「父」→「私」、二人称「娘の名前」→「君」などに変更)したのが本書「苦しかったときの話をしようか」です。
ちなみにもちろん、タイトルにある「苦しかったときの話」は親子関係とは別に存在します。
たとえば、
などです。
しかし本記事ではほとんど触れないため、気になる方は「苦しかったときの話をしようか」を読んで確かめてみてください。
TCL診断とは?自分のタイプを知る方法を要約
森岡毅氏は、本書「苦しかったときの話をしようか」で上記のように述べています。
「Self Awareness」を日本風に言い換えるなら、
ってやつでしょうか。
たしかに周囲を見渡せば、私たち日本人は「自分探しの旅」のスタートラインにすら立てていない若者が多いように思われます。
では自分を知るためにはどうすればいいのか?
まずはざっくりと大雑把に、方向性を定めることです。
その方向性を定めるために、TCL診断が役立ちます。
TCLとはずばり、
- Tの人(Thinking=思考力が強み)
- Cの人(Communication=伝達力が強み)
- Lの人(Leadership=統率力が強み)
です。
ではTCL診断のやり方を簡単3ステップで要約しましょう。
- A4ノートを4ページ用意し、「T」「C」「L」「それ以外」に分類する
- 付箋を50枚~100枚用意し、「自分の好きな動作」を1枚あたり1個書く
- できあがった付箋を「T」「C」「L」「それ以外」のページに仕分ける
です。
上記の状態を再現できるなら、スマホのメモアプリ(フォルダ機能付き)等でもかまわないはずです(私はスマホでやりました)。
重要なのは「自分の好きな動作」を必ず最低でも50個は書き出すことです。
さらに注意点として、「好きなもの」ではなく「好きなこと」です。
そこで「iPhoneで電話をするのが好き」はT、C、Lのどれでしょうか?
「電話」とは通話でありCommunicationであるため、Cです。
というわけで「iPhoneで電話をするのが好き」であるなら、Cに1票入ります。
このように投票活動を繰り返し、50票~100票分ぐらい集計しましょう。
100票分も書けば重複する「好きな動作」も出てきますが、同義ではないなら気にする必要はありません。
たとえば、
- iPhoneで電話をするのが好き
- iPhoneで通話をするのが好き
- iPhoneで会話をするのが好き
これらは「まったく同じ動作の言い換え」でしかないため、1つを残して削る必要があります。
しかし、
- iPhoneで電話をするのが好き
- SNSで雑談配信するのも好き
- 人と直接会って話すのも好き
これらは「話す」という動作は同じですが、いずれもシチュエーション(状況)が違うため、すべてカウント可能です(上記の場合、Cに3票)。
結果、T、C、Lのうち、得票数がもっとも多い属性こそ、自分の得意な分野である可能性が高いと森岡毅氏は述べています。
またTCLだけではなく、3パターンある得票の仕方を見れば、
- 1つの系統に集中している特化型
- 2つの系統に集中している相乗型
- 3つの系統に分散している万能型
自分がどのタイプに属しているのかもわかるといいます。
ちなみに森岡毅氏の経験則によれば、8割の人間が特化型に分類されるそうです。
そして特化型のなかでも、Lの特化型はTおよびCの特化型より少ないそうです。
まあなんとなくわかりますよね。
とはいえタイプによる優劣はないでしょう。
重要なのは「自分がどこを向いているのか」、そして「どこに向かえばいいのか」を合致させることです。
自分が強烈なカリスマ性とリーダーシップを誇っているのに、
とかをやっていても仕方がないわけです。
それを知るために、TCL診断は十分使えると思います。
もちろん本書「苦しかったときの話をしようか」には、TCLそれぞれの特徴や、「向いている職能」が紹介されています。
本記事では私のタイプに少し触れるだけなので、全部知りたい方は「苦しかったときの話をしようか」を読んでお確かめください。
Thinkingの特化型はどんな職能が向いている?
というわけで私もTCL診断をやってみたんですが、ぶっちゃけやる前から結果はわかっていたんですよね。
「考えれば」わかることです。
です。
私は友だち100人なんて考えるだけで管理が面倒(管理外の人間を「友だち」と呼べるのかは疑問)になって疲れます。
また管理といえば一応、管理責任業務やマネージメント、リーダーポジションの経験はありますが、あくまで小規模なものです。
というわけで私がThinkingの特化型といわれても、納得感しかありません。
Thinkingの特化型に関しては、その思考力を自分の内面に向けたことがある人間であれば、TCL診断をするまでもなく自覚があるはずです。
では私がTCL診断で「付箋」に書いた動詞を3つ挙げましょう。
- 自分のアタマで考えるのが好き
- 娯楽作品からでも学ぶのが好き
- 問題や疑問点に答えるのが好き
こうした「好き」を書き出すことが多い人間は、Thinking寄りであると考えられます。
またThinkingの特化型が持つ趣味としては、
- 頭を使う戦略系ゲーム
- 頭を使う難しめの読書
- 頭を使う言語化ブログ
などがありがちです。
これが答えです。
本書「苦しかったときの話をしようか」では、人間の本質的な武器として「知力」が挙げられています。
Thinkingの特化型は、必然的に考える力=知力が高めです。
つまりThinkingの特化型は、業務内容がなんであれ、その知力をもって適応すれば上手くやれるだろう、というロジックです。
たとえばウーバーイーツ配達員をやるにしても、効率のいい受注方法から配達ルートまでを「考えれば」ほかの配達員より上手く稼げるわけです。
ちなみに私は本記事で「ウーバーイーツ」「ウーバーイーツ」いっていますが、ウーバーイーツ配達員をやったことは一度もありません(「苦しかったときの話をしようか」にも書かれていません)。
「考えて」例えているだけです。
たとえ機械のように手足を動かすだけの単純作業でも、
考えることができる、それがThinkingの強みです。
とはいえ、
では、なんの指針にもなりません。
そこで「苦しかったときの話をしようか」を参考に、Thinkingの特化型が特に能力を発揮できる職業をいくつか挙げましょう。
- マーケターやコンサルタントなどの戦略家
- 投資家や証券アナリストなどの資産運用系
- 弁護士、税理士、司法書士、その他8士業
- 大学教員や企業で商品開発に携わる研究職
- 作家、翻訳家、評論家、ライター、文筆業
などがThinkingと相性がよさそうな業種です。
こうして方向性を絞っておけば、あとは自分の興味や関心に従って目指すべき職場へと歩くだけです。
そうすれば、たとえ迷ったとしても大きく道を踏み外すことはない、それがTCL診断です。
ちなみにTCL診断は、なんらかの特化型……特に私のようにThinkingの特化型であれば、「やるまでもない」と思いがちですが、
なぜなら、たとえばもしThinkingに加えてLeadershipも強いということが判明すれば、強力なThinking型経営者などで成功する可能性が見えるからです。
じつは特化型ではなく、2つ以上で強いシナジー型かもしれない可能性に備えましょう。
「苦しかったときの話をしようか」にはThinking型経営者っぽいとして、
- USJ元CEO、グレン・ガンペル
- セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長、鈴木敏文
- Amazon.com創業者、ジェフ・ベゾス
などが挙げられています。
自分のことが本当に完璧にわかっている方以外は、TCL判断を試してみる価値はあると思います。
まとめ:就活や転職で悩んでいる人にオススメ
- 本書「苦しかったときの話をしようか」はTCL診断が面白い!
- TCLとは、Thinking、Communication、Leadershipの頭文字!
- 自分がどのタイプなのかがわかれば、職能も自ずと絞られる!
以上です。
もちろんTCL診断は「苦しかったときの話をしようか」のなかのほんのごく一部の要素です。
タイトルにもなっている「苦しかったときの話」も教訓や示唆に富んでいます。
困難に遭遇したとき、TL集中型の森岡毅氏は、
正攻法で乗り切っていました。
T特化型の私だったら……と考えると、なかなかできることではありません(というか、そういう場所にたどり着く気も居座る能力を磨く気もさらさらありませんが)。
では最後に、本書「苦しかったときの話をしようか」で一番印象的だったフレーズをご紹介して終わりたいと思います。
本記事でご紹介したTCL診断は、「失敗ルートを選ばないための方法論」です。
しかし失敗を必要以上に恐れる必要はありません。
つまり成長に失敗はつきものです。
なのに「失敗しない人生」を選ぶということは、「成長しない人生」を選ぶことにほかなりません。
TCL診断によって方向性を見定めたなら、あとは挑戦あるのみ。
就活でも転職でも、ガンガン挑戦しましょう。
大丈夫、最悪無職になったからって死ぬわけではありません。
それに森岡毅氏にいわせれば、「最悪」はほかにあります。
「失敗しない人生そのものが、最悪の大失敗ではないのか?」
私も失敗は改善に活かされる限り、何度してもいいと思います。
以上、苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」の読書感想文でした。
THIS IS THE ANSWER.