喧嘩商売(著:木多康昭)全24巻を読みました。
です。
同じ異種格闘技戦をテーマにした有名作品には、
- 『グラップラー刃牙』シリーズ
- 『餓狼伝』シリーズ
などがあります。
私は『刃牙』も『餓狼伝』も大好きで、たまに読み返したり新刊をチェックしたりしています。
そして『喧嘩商売』は、
というわけで『喧嘩商売』がいかに面白いのか、簡単なあらすじと注意点も交えて感想や解説を述べます。
ポイントは3つ、
- ギャグストーリーパートが面白くない場合は読み飛ばしてほしい
- 格闘技の煽りVが好きな人は『喧嘩商売』の煽りも絶対楽しめる
- 佐藤十兵衛VS金田保戦は私が読んだ全格闘漫画史上ベストバウト
です。
では以下目次です。
漫画『喧嘩商売』の簡単なあらすじとネタバレ
です。
佐藤十兵衛がどれくらい喧嘩自慢で煩悩まみれなのかというと、
- 十兵衛が調子に乗っていたら、チンピラが絡んできたのでボコボコにする
- 十兵衛が学校の教室で勃起中、チンピラがヤクザと一緒に乗り込んでくる
- 十兵衛は勃起しながらヤクザをボコボコにして、2階の窓から投げ捨てる
というエピソードが初っ端に描かれるぐらいです。
ちなみに十兵衛が勃起していた理由は、同じクラスのヒロイン(?)、山田綾子とペティる(ペッティングする)ことを妄想していたからです。
さて、そんな十兵衛ですが、空手家とも小競り合いを繰り返します。
そして、
と喧嘩をすることになります。
高野照久は、天才空手家高校生として名を馳せていた実力者です。
しかし、喧嘩を売ってきた十兵衛に触発されてグレます。
そして師匠である進道塾青木派の師範、青木祐平に喧嘩を売って打ち負かします。
じつはこの高野と十兵衛には、過去に十兵衛がイジメられていたところを偶然通りかかった高野が助けた、という因縁がありました。
そうした経緯から、十兵衛は高野との対戦を熱望していたのでした。
しかし、十兵衛が高野に「空手」で勝てるはずもなく、ゆえに十兵衛は高野やその周辺に「喧嘩」を売っていたのです。
そして見事マッチメイクに成功した十兵衛は、お得意の知略を張り巡らせて高野すらも倒してしまいます。
それから勢いづいた十兵衛は、とうとうヤクザの組事務所でも暴れます。
が、堪忍袋の緒が切れたヤクザは、用心棒として、
を雇って十兵衛に差し向けてしまいます。
工藤優作は、不幸な生まれと極度のストレス状態から、神経伝達物質を自由にコントロールする術を身につけた男です。
神経伝達物質とは、
- アドレナリン
- βエンドロフィン
- ドーパミン
などのいわゆる脳内麻薬です。
これによって工藤優作は、
- 火事場の糞力を常に発揮したり、
- 異常な闘争心や多幸感を得たり、
- 鎮痛効果で痛みを無効化したり、
しながら戦うことができます。
そして佐藤十兵衛は、工藤優作にボコボコにされて敗北します。
最後は顔面腫れまくりの血まみれで、小便を漏らしながら命乞いをし、しかも県知事である親の権力のおかげで命だけは助けてもらう、という普通なら再起不能の負け方をしました。
しかし十兵衛は普通ではなかったため、工藤への復讐を誓って再起します。
そして入江文学に弟子入りします。
入江文学は、古武術である「富田流」の六代目を継ぐ達人です。
富田流とは、剣豪である富田勢源が起源の武術で、同じく剣豪の鐘捲自斎や、佐々木小次郎の系譜であるとされています。
十兵衛はこの入江文学から、
- 「金剛」
- 「無極」
という技を伝授されます。
「金剛」は、「重い金属で体の表面じゃなく心臓を強く叩くイメージ」の打撃で、決まれば問答無用で相手は気絶します。
「無極」は、走馬灯の速さで「死に直面した時の事を想像」し、一瞬だけ工藤と同じように火事場の馬鹿力を発揮したり、痛みや気絶のダメージを打ち消したり、脳が無意識にかけているリミットを外す技です。
さらに入江文学と十兵衛は、進道塾青木派の青木祐平から、
- 「煉獄」
をパクります。
「煉獄」は、進道塾本家本元の塾長で空手王、山本陸が編み出した秘伝の技です。
「煉獄」を伝授されたのは進道塾のなかでも指折りの内弟子や高弟のみで、分析を防ぐためにギャラリー(観戦者)のいないタイマン(1対1)でしか使用が許されない秘技とされていました。
したがって十兵衛が観戦していた高野VS青木戦では、「煉獄」は使用されていません。
しかし仮に青木が「煉獄」を解禁していた場合、高野に勝ち目はなかったでしょう。
なぜなら、
というまさに必勝法が「煉獄」だからです。
十兵衛はこの「煉獄」を不完全ながらも習得し、
- 「金剛」
- 「無極」
- 「煉獄」
をひっさげ、工藤優作へのリベンジに燃えます。
そして工藤優作の居場所を掴むために、工藤優作と関わりのあるヤクザとそのフロント企業が開催する格闘技大会に出場します。
そこで十兵衛は、オリンピック柔道100キロ超級の金メダリスト、金田保と対戦することになるのでした。
ギャグがつまらない場合は読み飛ばしてほしい
さて、ここで漫画『喧嘩商売』を100倍楽しく読むための注意点があります。
です。
『喧嘩商売』は格闘漫画ですが、作者が木多康昭(きた・やすあき)先生です。
木多康昭先生は、下ネタや時事ネタやパロディに強い漫画家で、『喧嘩商売』にもその作風は受け継がれています。
つまり、格闘ストーリーパートとは無関係な、
- 援助交際で逮捕歴がある「しまぶー(島袋光年先生、代表作『世紀末リーダー伝たけし!』、『トリコ』)」のパロディ
- 主に未成年の少女に手を出したり、性行為や性犯罪や性犯罪的な行為に及んだりしたとされる有名芸能人たちのパロディ
- その他、主に女子高校生を性的対象とした下ネタ、ほかの漫画家や漫画作品、「2ちゃんねる」や「VIPPER」のパロディ
といったギャグストーリーパートが頻繁に挿入されます。
ギャグパートでは時事ネタも多く、下ネタも偏りすぎているため、合わない人はとことん合わないです。
でも、我慢してほしい。
本当に面白くないと思った方や、読み進めるのが苦痛な方は、
ので、読み飛ばしてほしい。
木多康昭先生は、おそらくこのギャグパートが本当に好きで描いている漫画で、ギャグパートを描いて息抜きができたからこそ、格闘パートも描けたんだと思います。
ですから一見『喧嘩商売』というタイトルとは無関係なギャグストーリーも、『喧嘩商売』が存続するためには必要だったページです。
ただ、一読者の感想として、
です。
こうした読者の評価は作者側も把握しているはずで、続編の『喧嘩稼業』ではギャグストーリーが封印されています。
したがって、『喧嘩商売』を読み始めたはいいものの、ギャグ要素で挫折しそうな方がいたら、本当にそこは乗り越えてほしい。
その先には、佐藤十兵衛VS金田保という、私が読んだ全格闘漫画史上もっとも熱い試合が待っています。
格闘技の煽りVが好きな人にはオススメできる
さて、では注意点の説明も終わったので、漫画『喧嘩商売』の魅力を解説します。
これです。
『喧嘩商売』のコミックス冒頭には、毎回この文言の煽りが序章扱いで挿入されています(いくつかバリエーションあり)。
そして煽りと同時進行で、毎回違う登場人物たちのバックボーン(背景)が描写されます。
現実の格闘技イベントでも、試合直前に、
- 対戦する選手の練習風景や密着映像やインタビュー
- お互いにビッグマウスで挑発しあっている会見映像
- 過去の試合のハイライトや派手にKOしているシーン
などが流れて、気分を盛り上げてくれますよね。
いわゆる、
です。
私はこの煽りVが大好きで、格闘技の試合には必須だと考えています。
煽りVがあるからこそ、たまにしか格闘技を観ない私のような人間でも、ふらっと格闘技の世界に入っていけます。
その煽りVを、漫画で完璧に現実以上に表現しているのが、『喧嘩商売』です。
なにせ、その時点ではまだ本編に登場していないキャラや、描かれていない過去や未来のハイライトが「序章」として切り抜かれたりするわけで、
ただし、初期の頃はまだそこまで洗練されていないため、微妙だと感じるかもしれません(あとたまに、完全にふざけている巻があります)。
しかし巻を重ねるごとに洗練されていき、後半は完全にボスラッシュと化します。
特に佐藤十兵衛VS金田保戦以降は、漫画本編も煽りVと化します。
そして微妙に違う世界で生きてきた格闘家たちのエピソードが描かれ、第2部『喧嘩稼業』のヴァーリトゥードトーナメント(陰陽トーナメント)へと続きます。
十兵衛VS金田戦は全格闘漫画史上ベストバウト
そして漫画『喧嘩商売』を語る上で絶対に欠かせないのが、
です。
本記事のあらすじの項目でもご紹介したとおり、主人公の佐藤十兵衛は工藤優作の居場所を掴むために、まずは金田保と戦うことになります。
しかし金田は、日本の柔道100キロ超級で1番強い柔道家ではありませんでした。
2番手ですらなく、じつは3番手の柔道家です。
つまり金田は、卑怯者のクズです。
しかしクズはクズでも、オリンピックに出場すれば金メダルは獲ってくるレベルの、ナチュラルな実力も備えたクズでした。
以上を好意的に言い換えれば、
それが金田保です。
「柔道」では勝てない相手に、「なんでもあり」で勝って「柔道王」となった選手です。
そういう意味では、「空手」では勝てない高野照久に、「喧嘩」で勝った佐藤十兵衛と同じタイプだといえるでしょう。
そして金田は、より「なんでもあり」に近く、ドーピング検査などもゆるい総合格闘技に転向します。
そんな金田保の、総合格闘家としてのデビュー戦を飾る相手が、
です。
しかし十兵衛は、親が上級国民だとはいえ、一介の高校生に過ぎません。
具体的には、同じイベント主催者が開催するプロレス大会に殴り込みをかけ、メインイベントで戦う予定だったプロレスラーをまとめてぶっ潰して売名したからです。
というわけで、手段を選ばない男同士の対戦が実現しました。
対戦ルールも、総合格闘技より実戦に近い、
- 金的あり
- ノックダウン後の攻撃も1回まであり(上記と併せて、ダウンしている選手の金玉を蹴り潰すのもあり)
- 時間制限なし
- レフリーなし
- 3ノックダウン制(3回ノックダウンした時点でKO勝利)
- ノックダウン後にセルフでボタンを押して、相手が15カウント以内にボタンを押し返せなくてもKO勝利
といった「デス・バトル ルール」に決まりました。
そして金田保は、当たり前のようにドーピングを使用、メリケンサックも装備して十兵衛戦に挑みます(どちらも「デス・バトル ルール」でも反則)。
このドーピングが非常に面白いギミックになっています。
金田は柔道引退後、常日頃から筋肉増強剤を服用していました。
しかしそれとは別に、試合中に瞬発的に効力を発揮するタイプの服薬も行います。
一言で説明すると、
です。
- パワーアップ
- 集中力アップ
- ダメージ回復
- トリップ状態
すべてが1分間持続します。
このドーピングが作用すれば、たとえ自分の金玉が蹴り潰された直後でも、全力で相手を蹴り殺しにいく力が湧いてきます。
金田はそのための薬をカプセル剤にして、通常カプセル、2重カプセル、3重カプセル、4重カプセル、と服用します。
- 10分後に溶けるカプセル
- 20分後に溶けるカプセル
- 30分後に溶けるカプセル
- 40分後に溶けるカプセル
というふうに。
つまり金田は、1試合のなかで10分ごとに1分間×4回、無敵になれます(10分間のインターバルを挟むのは、心臓への負担を考慮)。
このドーピングと無敵時間を巡る攻防が本当に熱い。
心臓に決まれば確実に気絶する十兵衛の「金剛」と、ドーピングで心臓がバグっている金田。
ドーピングで1分間だけ「魔人」になれる金田と、1分間以上連打が続く十兵衛の「煉獄」。
この佐藤十兵衛VS金田保戦は、私が読んできた全格闘漫画のなかでダントツでベストバウト(最高の名勝負)です。
まとめ:『喧嘩商売』は第1部だけでも面白い
- ギャグストーリーパートが面白くない場合は読み飛ばしてほしい
- 格闘技の煽りVが好きな人は『喧嘩商売』の煽りも絶対楽しめる
- 佐藤十兵衛VS金田保戦は私が読んだ全格闘漫画史上ベストバウト
以上です。
というわけで総評!
評価: 5.0漫画『喧嘩商売』は、異種格闘技戦という現実にはなかなか実現しない男のロマンが詰まった漫画です。
・キックもOKだが、投げ技が禁止のキックボクシング選手
・投げ技はOKだが、拳を握ったパンチが禁じ手の相撲取り
以上、漫画『喧嘩商売』の感想でした。
THIS IS THE ANSWER.