完璧な他人(原題『완벽한 타인』、2018年の韓国映画、日本語字幕版)を観ました。
~映画『完璧な他人』のあらすじ~
本作はイタリアの大ヒット映画『おとなの事情』の韓国版リメイクです。
『おとなの事情』は世界各国でリメイクされており、日本版もあります(『おとなの事情 スマホをのぞいたら』)。
私は韓国版が初めてなので、実際どうなのかは知りませんが、
と手放しで賞賛できるほど、素晴らしい映画でした。
オリジナル版や日本版と比較して、韓国版だけタイトルが示唆に富んでいますが、たぶん韓国版が最高傑作だと思う(と思ったけど、あとで調べたらオリジナル版も原題は『Perfetti sconosciuti』⇒『完璧な他人』だった……毎回毎回、なんで邦題は幼稚な改悪をするんだろう?)。
では以下目次です。
映画『完璧な他人』の簡単なあらすじ
~映画『完璧な他人』のあらすじ~
本作の舞台は現代の韓国、医者夫婦ソクホ&イェジンの新居です。
美容外科医のソクホは、引越祝いの食事会&皆既月食の天体観測に、男3人の幼馴染みを招待します。
幼馴染みたちは、それぞれ妻や恋人を連れて食事会に参加します。
~ソクホ&イェジン夫妻~
~テス&スヒョン夫妻~
~ジュンモ&セギョン夫妻~
~ヨンベ(バツイチ独身)~
↑妻同士もすでに顔見知りで、特に精神科医イェジンと専業主婦スヒョンは仲良しです。
一同は再会を祝し、月食を見たりゴシップを話したり、「男性の脳はAndroid、女性の脳はiPhone」などとディスりあったりして盛り上がります。
そして話は、本来なら呼ばれていたはずの男友達スンデの話に。
しかしソクホたちは、今日集まった仲間に秘密はないと断言。
特に40年来の付き合いがある男たちは同調し、乾杯します。
そこで精神科医イェジンは、ゲームを提案します。
獣医セギョンも乗り気で、着信&通知の設定変更禁止や、電話はスピーカーにするなどのルールを制定します。
夫たちはヤバい雰囲気を感じていますが、「反対」⇒「秘密がある」と見なされるため、反対できず。
そしてゲームが始まり、
~精神科医イェジン~
~弁護士テス~
~専業主婦スヒョン~
~整形外科医ソクホ~
~元体育教師ヨンベ~
~実業家ジュンモ~
~専業主婦スヒョン~
そして険悪なムードになり、実業家ジュンモがゲームの中止を提案します。
が、ジュンモの妻セギョンが元彼と連絡を取り合っていたことが発覚し、ゲームの続きとして追求へ。
結局誤解は解けますが、勢いでゲームは続行。
~弁護士テス~
~体育教師ヨンベ~
~弁護士テス~
専業主婦スヒョンは、夫婦間のセックスレスや自分への無関心がすべて「夫がゲイだった」で解決され、夫テスの弁明など聞く余地がありません。
これには男友達もドン引きで、特にジュンモはゲイへの嫌悪感を隠しません。
そして全員が疑心暗鬼モードに陥るなか、
~実業家ジュンモ~
精神科医イェジンが提案したゲームは、夫ソクホに反対されて実行されていませんでした。
友人グループは、仲良く食事会を終え、笑顔で新居を出ます。
そして精神科医イェジンと実業家ジュンモは浮気メールを交わし、弁護士テス夫婦は仲睦まじく過ごし、それぞれ秘密を抱えながら帰路に就くのでした……。
~人は誰もが 3つの生活の場を持つ~
完璧な他人はいるのか?いないのか?
~作り話の作り話~
まあ厳密には「だれかが見ていた夢だった」というオチではありませんが、構造的には夢オチです。
夫ジュンモ(実業家)の浮気が発覚したあと、妻セギョン(獣医)が結婚指輪を外して、コインのようにテーブルの上で回転させます。
その結婚指輪があまりにも長時間回り続けており、これは映画『インセプション』で有名な、
つまり現実ならそのうち回転は止まるし、夢なら回転は止まらないという、『インセプション』のオマージュです。
そして、その現象をもって「これは夢の世界だよ」と種明かしがなされ、現実の世界へと切り替わります。
世界が切り替わったあとは、「スマホ開示ゲームがあった世界」と「なかった世界」が対比され、
↑たったこれだけのメッセージを伝えるのに、2時間かけたというオチです。
タイパ(タイムパフォーマンス)が重視される現代で、いったいなにをやっているのか……。
素晴らしい!
本作で特に上手いと思ったのが、その2時間を持たせるカメラワークです。
舞台は医者夫婦の新居で、移動や場面の転換はほとんどなく、ずっと同じ場所で食事会をしているだけ。
そして7人もいれば、地味な上に混乱する会話劇にしかならなそうですが、
このカメラワークにより、登場人物の描き分けがはっきりしていて、全然混乱しませんでした。
映し分けに耐えうるだけの俳優さんたちの演技力も素晴らしかったです。
ずっと同じ場所でこぢんまりとわちゃわちゃやるのは低予算映画にありがちですが、そんな凡百のB級映画とはレベルが違うし、
いや、これはまあ見た目や演技が可愛いのはもちろんですが、脚本のことをいっています。
本作の教訓は、「完璧な他人なんていないよ」でした。
でも、獣医セギョンだけは唯一、
やはり、「完璧な他人なんていない」とわかっていても、私たちは完璧を求めてしまいます。
そこへきて、獣医セギョンはほとんど完璧(容姿○、性格○、収入○)であり、可愛いと思うのは当然です。
ただ、男運×のせいで完璧ではないのと、
つまりセギョンは、普段からスマホは見られても平気だというわけですが、それって……。
別のスマホを隠し持っているだけでは?
スマホ2台持ちで、1台目をフルオープンにして清廉潔白アピールをしつつ、2台目は存在ごと隠しているだけでは?
人生なんのイベントもない引きこもりとか、人生もう枯れている老人とかじゃないんだよ?
若くて、美人で、金持ちなんだよ?
そして「完璧な他人なんていない」というメッセージと照らし合わせれば、
いや、こんな天使みたいに可愛いセギョンを疑うなんて、私は死んだほうがいいかもしれません。
なにも本作のメッセージが、「完璧な他人なんていない」と決まったわけではありません。
セギョンを見なさい、
完璧ではなくても善人はいるってこと
~テス兄さん、マジ弁護士~
テス兄さんは、弁護士でありながら、妻スヒョンが起こした車の事故を自分が起こしたと偽って身代わりになった過去があります。
そして12歳年上のキティちゃんパジャマ熟女(57歳・Dカップ)にハマっており、妻子にバレたら終わりでした。
それで元体育教師ヨンベとスマホをすり替えて身代わりにするなど、全然完璧ではありませんが、
妻スヒョンや、親友ジュンモから、最大級の嫌疑と嫌悪感を向けられても……。
アウティング(他人の同性愛をカミングアウト)はせず、同性愛者ヨンベを守り切りました。
テス兄さんは、たった一言、
と弁明すれば、一発で嫌疑が晴らせました。
その代わり、本来背負うべきだった謎のキティちゃんパジャマ熟女の画像については追求されますが、妻スヒョンの怒り方からしてゲイ疑惑よりは全然マシです。
実際、妻スヒョンからはこんな助け船を出されています。
それでもヨンベのために黙っていたテス兄さん、マジ弁護士。
まるで依頼人との守秘義務を守る弁護士のように、ヨンベへの差別や偏見を一身に背負います。
ここ本記事あらすじでは一瞬で済ませていますが、
そして妻スヒョンは、テスのもとを去ります。
同性愛者ヨンベは、残ったメンバーにカミングアウトをします。
するとテス兄さんは、それで妻を失ったにもかかわらず、まだヨンベに味方します。
これこそ真の友情です。
ちなみにニセモノの友情とは、実業家ジュンモが美容外科医ソクホの妻を寝取っているような状態をいいます。
いくら「完璧な他人はいない」といっても、40年来の親友の妻を寝取る外道もそんなにいないと思うんですが……。
そして同性愛者ヨンベは、ソクホに「ミンスさん(恋人)を紹介してくれよ」と頼まれるも、拒否します。
表向き優しくしてくれても、その目つきで傷つけるからと。
もしもみんなが、テス兄さんのような男だったら、ヨンベも心置きなく恋人を紹介できたでしょう。
夫ジュンモの浮気が発覚してブチギレモードの獣医セギョンも、追い打ちをかけて去っていきます。
しかしそんなテス兄さんの苦労も、「スマホ開示ゲームがなかった世界」では、なかったことになり……。
夫ジュンモとイチャイチャモードの獣医セギョンは、
と、無邪気にお願いし、体育教師ヨンベも「元気になったらね」と軽く流してお開きに。
はたして、「ゲームがあった世界」と「なかった世界」、どちらがよかったのでしょうか?
結局、秘密がバレなかったところで、秘密は存在しているんだし、
~スマホ開示ゲームがなかった世界~
まとめ:エンディング曲が最高だった
- 映画『完璧な他人』は、スマホ開示ゲームを通じて、完璧な他人なんてそうそういないと伝える映画
- だが、スマホフルオープンでも平気な女神セギョンや、完璧ではないものの善人のテス兄さんもいる
- リメイクされまくりの脚本はもちろん、俳優の演技からカメラワーク、エンディングまで完璧な映画
以上です。
以下総評!
評価: 5.0映画『完璧な他人』は、脚本やカメラや演技だけではなく、エンディングへの入り方も最高でした。
②私的な生活
③秘密の生活
②スマホ開示ゲームがなかった世界
以上、映画『完璧な他人』の感想でした!