アンパンマン(アニメ版)のテーマ曲、『アンパンマンのマーチ』では、こう歌われています。
なにをして 生きるのか
そんなのは いやだ!
ソース:ドリーミング アンパンマンのマーチ 歌詞 – 歌ネット – 2021年12月1日閲覧。
でも「嫌だ!」つっても、答えられませんよね、大半の人間は。
答えられるなら答えればいいんであって、答えられないからこそ、
と、答えになっていない悲鳴を上げています。
したがって『アンパンマンのマーチ』は、
です。
だからこそ、自分の存在意義がわからない人間のマーチ(行進曲)にもなりえるのでは?
というわけで本記事では、『アンパンマンのマーチ』を「私たちのマーチ」にするための、
- 『アンパンマンのマーチ』は、「自分の夢」がないヒーローの次善策
- 「自分の夢」がないから、「みんなの夢」を守ることに決めた行進曲
- 「君」も「自分の夢」がないなら、「アンパンマン」になればいい!
以上を解説します。
では以下目次です。
「生きる喜び」と「胸の傷」が矛盾している理由
生きる よろこび
さて、まずは『アンパンマンのマーチ』の歌い出しにしてサビです。
ここで一番重要なポイントは、
です。
嬉しい気持ちや生きる喜びについて歌いながら、最後に思いだしたように、「胸の傷」が痛むことに触れています。
ここでいう「胸」は、アンパンマンが胸に物理的な傷を負う描写がない以上、胸の内側にある「心」を指しています。
つまり、
と、読み取れます。
本当に「嬉しいんだ!」「生きる喜び!!」と感じているなら、
ですよね。
だから「嬉しい」とか「喜び」とかは、「胸の傷」に対する強がりでしかありません。
「なんのために生まれてなにをして生きるのか」
なにをして 生きるのか
そんなのは いやだ!
次に『アンパンマンのマーチ』全体で一番重要な箇所です。
前述の「胸の傷」は、この問いかけに端を発しています。
つまり、
なにをして 生きるのか
そして偽の答えで誤魔化すから、傷を負う。
偽の答えとは、続く歌詞です。
熱い こころ 燃える
だから 君は いくんだ
ほほえんで
「今を生きる」ということは、「未来」や「将来」ではないということです。
一方で前段の問い、
なにをして 生きるのか
私たちが、「自分はなんのために生まれきたんだ……?」と悩むときには、自分が持って生まれた使命⇒「これから果たすべき役割」を探しているはずです。
私たちが、「自分はなにをして生きるべきなのか……?」と悩むときには、「生きる」のは手段であり、目標⇒「将来の夢」が必要だと感じているはずです。
いずれにしても、問題は「今」ではない。
それなのに、
熱い こころ 燃える
だから 君は いくんだ
ほほえんで
というQ&Aがあったら、全然アンサーが噛み合っていませんよね。
「生き方(行動の方針)」の問題なのに、答えが「生きる(行動あるのみ!)」ではお話になりません。
わけです。
そしてアンパンマンは、論点のすり替えを自覚しています。
だからアンパンマンは、偽の答えしか用意できない自分に傷つき、偽の答えに飛びつくしかない自分に傷つきます。
では、傷ついた人間は笑わないでしょうか?
という歌詞からは、苦笑するしかない、あるいは作り笑いで誤魔化すしかないアンパンマンの悲痛な表情が浮かんできます。
でもまあ顔だったら、別に作り笑いだろうが痛々しい表情だろうが、「新しい顔」と交換すれば済むでしょう。
しかし、サビに突入すると、
生きる よろこび
すでに説明したとおり、「胸の傷」⇒「心の傷」が痛んでいます。
交換できない傷、癒えることのない傷です。
それはそうでしょう、
こんなに悲しいことはありませんよね。
でもわからないものはわからないので、アンパンマンは次に進みます。
「みんなの夢」を守るからアンパンマンは優しい
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため
アンパンマンは、「みんなの夢」を守るために生きます。
「自分の夢」がわからないのはもうどうしようもないから、代わりに「他人の夢」を守ることで、心を燃やします。
だって別に、自分の夢がわからないからって、他人の夢に協力する義理も道理もないでしょう。
「みんなの夢」とはいいますが、その「みんな」に、アンパンマンは含まれていないんですからね。
だからアンパンマンの立場からすれば、「みんなの夢」なんて本来、どうでもいいことです。
「みんなの夢」を守ろうが守るまいが、「みんなの夢」が守られようが守られまいが、アンパンマンには関係がない。
「夢」がないアンパンマンは「しあわせ」を探す
なにをして よろこぶ
そんなのはいやだ!
ここからは2番の歌詞です。
まず『アンパンマンのマーチ』において、「君(きみ)」とは、「アンパンマン」を指しています。
1番の歌詞で、
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため
と、明かされているとおりです。
『アンパンマンのマーチ』の歌い手は、二人称視点でアンパンマンのことを歌い、ときにはアンパンマンの心情に踏み込みます。
そしてアンパンマンは、「自分の夢」を持たないヒーローでした。
だから代わりに、「みんなの夢」を守ることに自分の「幸せ」や「喜び」を見出します。
しかし一方で、
こぼさないで 涙
だから 君は とぶんだ
どこまでも
「夢」の大切さを忘れてはいけません。
「自分の夢」がないことを思いだして悲しくなっても、「夢」の大切さを忘れてしまっては、「みんなの夢」を守ることに心を燃やせないからです。
「自分の夢」がないのはツラいけど、そのツラさがわかっているからこそ、「夢」を失ってしまう人のツラさもわかるはずです。
だからアンパンマンは、みんなが「夢」を失わないように、「みんなの夢」を守るために飛ぶことができます。
「夢」がないから「愛と勇気だけがともだちさ」
みんなのために
愛と 勇気だけが
ともだちさ
アンパンマンの友だちは、「愛」と「勇気」だけです。
「夢」は友だちではありません。
そして、「みんな」も友だちではありません。
「みんなの夢」はアンパンマンが守るけど、アンパンマンだけは「自分の夢」を持っていない、仲間外れ。
だからアンパンマンの友だちは、「愛」と「勇気」だけ。
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため
「夢」も「みんな」も友だちではないのに、「みんなの夢」を守るアンパンマンは優しい。
「光る星」アンパンマンだっていつか「消える」
光る星は 消える
だから 君は いくんだ
ほほえんで
「今」だけをずっと生きているアンパンマンには、「過去」や「未来」や、時間の感覚や区切りが存在しません。
「夢」がないから、「夢」の達成度合いに応じて過去を振り返ったり、未来を想定したりすることがない。
だから気がつけば時間が過ぎ去っていて、いつ自分が終わるかもわからない。
生きる よろこび
やさしい 君は
いけ! みんなの夢 まもるため
まとめ:「夢」がない?ヒーローになれるじゃん
- 『アンパンマンのマーチ』は、「自分の夢」がないヒーローの次善策
- 「自分の夢」がないから、「みんなの夢」を守ることに決めた行進曲
- 「君」も「自分の夢」がないなら、「アンパンマン」になればいい!
以上です。
本記事中でも触れましたが、『アンパンマンのマーチ』は、二人称視点「君(きみ)」で表現されています。
「君」とは、第一には「アンパンマン」を指します。
しかし、「君」が「アンパンマン」であることが明かされるのは、毎回歌詞の最後です。
よって、歌詞中の問いは、
なにをして 生きるのか
なにをして よろこぶ
まるで、私たちに問いかけているように聞こえます。
ということは、私たちに問いかけているんですよね。
その証拠に、みなさんこの『アンパンマンのマーチ』を聴いて、
- 自分が生まれた理由
- 自分が生きる意味
- 自分の幸せ
- 自分の喜び
などについて、答えを考えたでしょう?
つまり「君」とは、「私たち」のことでもあります。
そして、自分の存在理由が答えられなかったなら……「私たち」は、「アンパンマン」と同じですよね。
であれば、アンパンマンが見つけた答え、
「自分の夢」がわからないなら、「みんなの夢」に乗っかればいいじゃん。
そしたら、みんなのヒーローぐらいにはなれるよ、アンパンマンみたいに。
以上が、『アンパンマンのマーチ』の答えです。