13歳からの世界征服(著:中田考)を読みました。
です。
「13歳からの」とタイトルにあるとおり、主な想定ターゲットは13歳前後の学生(小学生~大学生)です。
が、お子さんをお持ちの親御さんはもちろん、独身の大人であっても参考にはなるでしょう。
なぜなら、本書で三種の神器が如く持ち出されている(と私が感じた)解決策があり、
- 交番
- 刑務所
- 生活保護
を十分に使いこなせるのは、やはり大人だからです。
というわけで、本記事では大人の私が『13歳からの世界征服』を読んだ感想を述べます。
では以下目次です。
『13歳からの世界征服』の簡単な内容紹介
まずは改めて『13歳からの世界征服』を紹介するにあたり、軽く引用します。
人に言われて勉強させられているだけですから。
中学生や高校生なら、勉強=受験勉強ですよね。
つまり、なんで勉強しているかと言えば、「いい大学に入るため」。
それ以外、何もありません。
大学に進学しないのなら、勉強なんてする必要ありません。
だいたい勉強に興味がある人なら、こんな質問は出てきません。
勉強しなくたって何も困りはしないし、大学教授だって中学高校で習ったことなんて何も覚えていません。
灘校、東大を出て大学教授になった私が言うのだから間違いありません。
と、答えられているとおり、著者である中田考先生の略歴は、
- 灘中学校・灘高等学校卒業
- 東京大学文学部卒業
- カイロ大学大学院文学部哲学科博士課程修了(哲学博士)
- 同志社大学神学部教授
です。
なお現在(2020年)は教授職からは退任されていますが、イスラーム法学者としては現役です。
2020年には(以前から同人誌として執筆されていた)ライトノベル『俺の妹がカリフなわけがない!』の商業出版も果たされ、
などと名乗って精力的に活動中です。
さて、本書における「世界征服」を説明するためには、まずこの「カリフ」から説明する必要があります。
「カリフ」とは、イスラームのカリフ制における最高指導者のことです。
「カリフ制」とは、カリフを中心にイスラーム法が世界を統治する制度のことです。
つまり敬虔なるイスラーム教徒であらせられる中田考先生にとっては、
です。
『俺の妹がカリフなわけがない!』の出版も、世界征服活動の一環です。
ではなぜ世界征服をするのか?
ひとつには、不安を消し去るためです。
中田考先生は答えます。
夢も目標もどうやって持てばいいのかわかりません。
そんなことを考えていると不安になります。
不安なのは、夢や希望が実現するかどうかわからないからです。
実現しないとわかっていれば、不安の持ちようがありません。
こうした考えに基づき、中田考先生は(自分が存命中の実現は限りなく不可能に近い)カリフ制再興に取り組んでいます。
私たち日本人の場合は、大多数がイスラーム教徒ではないため、中田考先生と志を同じくすることは難しいでしょう。
しかし各々のやり方で「世界征服」を目標にすることはできます。
そうして「世界征服」を軸に考えれば、
- いじめっ子から逃げて親や教師や警察に泣きつくみじめさとか、
- 生活保護や刑務所のお世話になって生きていく後ろめたさとか、
- 恋人ですらない相手にいきなり婚姻届を手渡す恥ずかしさとか、
不安を感じている暇はないでしょう、だってこっちは「世界征服」のために急いでいるのだから……。
というのが、本書の根幹をなすロジックです。
その他、本項目の冒頭でご紹介したような相談も収録されています。
合計で、本書に収録されているQ&Aは61個です。
おおまかなテーマについては、目次を参照しましょう。
- 第1章「なぜ人を殺してはいけないのですか――人生の悩み」
- 第2章「いじめられています――人間関係の悩み」
- 第3章「なぜ勉強しなくてはいけないのですか――勉強の悩み」
- 第4章「夢が持てません――世界征服のススメ」
- 第5章「好きな人に告白できません――恋愛の悩み」
- 第6章「人は死んだ後どうなるのですか――その他の悩み」
以上です。
日本人は生活保護の受給が「恥ずかしい」
さて、私が本書『13歳からの世界征服』を読んで最初に連想したニュースがあります。
ソース:「食べ物ください」コロナで解雇、路上生活の末…恐喝未遂の30歳女に刑猶予 – Yahoo!ニュース – 2020年10月31日(土)閲覧。
上記は2020年10月22日に報じられると、たちまちTwitterのトレンド入りを果たしたニュースです。
ニュースの要点を3点でまとめると、
- COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響でうどん店から解雇された女性が、
- 家賃も払えなくなり、数ヶ月のホームレス生活を経て、高級店で恐喝行為に及ぶ。
- 被告は福祉に頼ってはいけないと思い込んでいた。「私は健康だし、恥ずかしい」
です。
被告のケースでは、逮捕前から生活保護またはそれに準ずる公的支援が受けられる条件が揃っていたと考えられます。
公園のベンチで寝泊まりしている被告に、「福祉施設に入ったほうがいい」とアドバイスをした人もいました。
しかし被告は、生活保護や福祉施設に頼ることはしませんでした。
「恥ずかしい」からです。
おそらく日本人にとって、生活保護などの支援を受けることに対する最大の障壁のひとつがこれです。
日本は生活保護の補足率がかなり低い
日本は諸外国に比べ、生活保護の補足率(生活保護を受給する資格がある人のうち、実際に受給している人の割合)が圧倒的に低いことで知られています。
生活保護の補足率について、日本弁護士連合会が、2010年のデータに基づいて作成したパンフレットがあります。
この日弁連『生活保護 Q&Aパンフ』によると、各国における生活保護の補足率は、
- スウェーデン……82%
- イギリス……47~90%
- フランス……91.6%
- ドイツ……64.6%
- 日本……15.3~18%
であるとされています。
ソース:生活保護Q&Aパンフ– 日本弁護士連合会 – 2020年10月31日(土)閲覧。
日本の補足率がこれだけ低いのは、やはり「恥」を重んじる文化が影響しているように思われます。
私も生活保護の受給は恥ずかしい
実際、私も生活保護を受けたことはありませんが、
であると答えるでしょう。
でも世界征服のためなら?恥は捨てられる
本書『13歳からの世界征服』を始め、いろいろな人が、さまざまな場所でいいます。
- 生活保護を受ければ、食べ物が買えるじゃないか
- 生活保護を受ければ、住む場所もあるじゃないか
- 生活保護がダメでも、役所や交番の前で騒げばOK
と。
こうして必勝法のように、生活保護や刑務所を利用すれば万事解決、とオススメしてきます。
でも「恥ずかしい」という感情だけは、いまだに解決されていません。
だからいまも、刑務所はもちろん、「生活保護は恥ずかしい」と感じる日本人が大多数でしょう。
しかし本書には、必勝法セットとして、「生活保護+世界征服」という案が提示されています。
中田考先生はいいます。
けれども、世界征服のためだと考えれば、みじめさなんて吹き飛びます。
生活保護も世界征服実現のための戦略の一部だと考えられるからです。
刑務所に入ったとしても、そこで食うに困らない生活をして健康づくりをしながら、じっくりと世界征服の計画を練ることだってできる。
それこそが高い志というものです。
これを突拍子のない、現実味のない、相手にする価値のない絵空事と捉えるかどうかは、その人次第です。
しかし相手にしなかったところで、保護施設の利用資格を満たしているような人には、もはや多くの選択肢は残されていません。
前述した事件の被告が、結局は犯罪行為に及んでしまったように。
- 生活保護か、
- 刑務所か、
- はたまた被告のように「更生緊急保護」か。
結局は大差のない結果に落ち着きます。
であれば、さっさと「恥ずかしさ」なんか捨てて、世界征服のために、この世のありとあらゆる制度を利用してやろう、と考えるのも一興ではないでしょうか。
まとめ:されど恥を取るなら世界の終わり
というわけで本記事の要点を3点でまとめます。
- 本書『13歳からの世界征服』は、私たちの「恥」を解消する1冊
- 「世界征服」のためだと考えれば、大抵の障壁は乗り越えられる
- 「世界征服」を拒んで野垂れ死ぬ道を選ぶなら、それもまた一興
です。
③『「世界征服」を拒んで野垂れ死ぬ道を選ぶなら、それもまた一興』について補足します。
本書は別に、弱者にわかりやすい優しさで寄り添う1冊ではありません。
そこが私の気に入っているところです。
たとえばイジメについて、中田考先生はいいます。
相手にしてもらえなければ交番の前の道に寝っ転がって、泣いて手足をバタバタさせて「助けて」と叫び続ける。
そんな恥ずかしいことはできないと言うなら、いじめよりもその恥ずかしさの方が嫌なわけですので、そのいじめは大したことはないということです。
本書には「恥ずかしさ」に打ち勝つ戦略として、「世界征服」が挙げられています。
しかし、「世界征服」よりも「恥ずかしさ」のほうが勝るなら、もはや打つ手はありません。
世界征服が恥ずかしいなら、世界の終わりです。
それほど大事な「恥ずかしさ」によって、
- 生活保護を拒み、
- 刑務所を拒み、
- 生きることを拒むなら、
積極的消極的問わず、自殺という結果を迎えることもあるでしょう。
その選択はその人の自由です。
その人がイスラーム教徒とかではない限り、神を信じない限り、「殺人は悪い」とか「自殺は悪い」とか、神未満の他人が勝手に決めた基準を信じる必要すらないというわけです。
なんなら、漫画『るろうに剣心』に登場する志々雄真実のように、「閻魔相手に地獄の国盗りだ」と目論んで死ぬのもありでしょう。
最後に、私が本書で爆笑したところを総評として終わりたいと思います。
評価: 5.0それは私が本書の第6章「人は死んだ後どうなるのですか――その他の悩み」を読んでいたときのことでした。
以上、『13歳からの世界征服』の読書感想文でした。
THIS IS THE ANSWER.