問題のある発言が、問題のある切り取り方で報じられてめちゃくちゃになった事件。
~静岡県知事選、上川陽子大臣の応援演説~
- ソース1:上川氏「うまずして何が女性か」 静岡知事選の応援演説で – 共同通信 – 2024年5月19日閲覧。
- ソース2:「うまずして何が女性か」上川陽子外相、静岡県知事選応援演説で – 毎日新聞 – 2024年5月19日閲覧。
- ソース3:「うまずして何が女性か」 上川外相、静岡知事選応援で発言 – 産経ニュース – 2024年5月19日閲覧。
- ソース4:上川陽子外務大臣「うまずして何が女性か」静岡県知事選挙の応援演説で – NHK – 2024年5月19日閲覧。
- ソース5:上川外相、静岡知事選の応援演説で「生まずして何が女性でしょうか」 – 読売新聞 – 2024年5月19日閲覧。
さて今月、自民党の上川陽子大臣を巡る報道で賛否両論入り乱れて荒れまくりました(2024年5月)。
問題となった上記「うまずして」発言には、「この方を(自民党が推薦する静岡県知事を)」という文脈があります。
一方で報道各社は、記事タイトルにおいて「うまずして何が女性か」の部分を強調して批判的に取り上げました。
~論点その①~
~論点その②~
~結論~
切り取りは倫理の問題、読解は国語の問題、上川大臣の失言はジェンダー差別の問題です。
ひとつずつ問題点を整理しましょう。
では以下目次です。
切り取り報道の問題点は?恣意的な省略で誤解を生む
~切り取り報道の問題~
上川陽子外相(衆院静岡1区)は18日、地元・静岡市内で行った静岡県知事選の自民党推薦候補の応援演説で、同候補の当選を訴える際に「この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」との発言をしていたことが関係者の話でわかった。配慮を欠いた発言との指摘が出る可能性がある。
ソース:上川外相「この方をうまずして何が女性か」 静岡知事選応援演説で – 朝日新聞デジタル – 2024年5月19日閲覧。
さて、本記事で扱うネット記事のうち、一番まともな朝日新聞から引用したのが上記です。
朝日新聞は記事タイトルで「この方を」を含み、上川陽子大臣の意図を汲んでいます。
それ以外の報道各社は、読売新聞は「生まずして」、それ以外は「うまずして」から記事タイトルにしており、
- 共同通信
- 毎日新聞
- 産経新聞
- NHK
- 読売新聞
①②③④⑤「生まずして(うまずして)」から記事タイトルに用いた各メディアは、そう批判されても仕方がありません。
朝日新聞が「この方を」を含めて記事タイトルにしている以上、ほかの新聞にできない理由はありません。
正確な発言と各記事タイトルを比較すれば、
~上川陽子大臣の発言~
~読売新聞~
~共同通信、毎日新聞、産経新聞、NHK~
いきなり「生まずして(うまずして)」から始まり、「何が女性」とくれば、一定以上の性知識を備えた人間ならだれもが「出産」を連想します。
オリジナルの発言から「この方を」を省くのは、「出産せずして何が女性か」と読ませたい悪質な印象操作の切り取りです。
上川大臣の発言を問題視したければ、朝日新聞のように正々堂々と引用した上で批判すれば良いのであり、
「うまずして」の問題点は?一方的な女性の存在定義
~全文と文脈を読んでも問題~
さてしかし、切り取り報道とは別の問題として、上川大臣は上記のように注釈を入れた上でも問題発言をしています。
問題なのはもちろん、「女性が生まずして何が女性」の部分です。
上川発言において、「何が女性」の「何」の部分には「この方を生まずして」が入るわけですから、
と、女性たちに迫っているわけですね。
意味不明です。
なぜ女性であれば、自民党推薦の大村慎一氏を静岡県知事として生まなければならないのか。
それとも、自民党推薦の大村慎一氏が、世の女性のパパかなにかなの?
ママ活なの?
パパ活なの?
このあまりにも意味不明な呼びかけに、やはり「女性が生まずして何が女性」とは、「女性の出産」が念頭にある可能性を検討せざるをえません。
子どもを産むのが女性であり、知事を生むのも女性だ、その生産力こそが女性の本質であり役割だといいたいんじゃないのか?
その証拠に、上川大臣は、
~うみの苦しみについて~
上川氏は、自身の過去の選挙演説で「うみの苦しみにあるけれども、ぜひうんでください」と支持を訴えた経緯にも言及。「うみの苦しみは本当にすごい。でもうまれてくる未来の静岡県、今の静岡県を考えると、私たちは手を緩めてはいけない」と語った。
ソース:上川氏「うまずして何が女性か」 静岡知事選の応援演説で – 共同通信 – 2024年5月19日閲覧。
当然「うみの苦しみ」とは、漢字で「産みの苦しみ」または「生みの苦しみ」であり、「出産の苦しみ」から生まれた言葉です。
「女性」そして「うみの苦しみ」という言葉が連呼されるなかで、「出産」を連想できないのは国語のテスト0点です。
しかしそうすると、「女性が生まずして何が女性」という発言は、
どう解釈しても、「何が女性」の問いに答えるためには、女性へのカルト宗教的な洗脳か出産を強いる性差別が伴います。
それもこれも、「女性が」なんていうクソデカ主語を使っているからです。
「何が女性」などと、一方的に女性の役割や存在価値を主張しているからです。
ジェンダー差別の問題は?社会的な性差と役割の強要
~ジェンダー差別の問題~
- 男性らしさ
- 女性らしさ
①②「ジェンダー」とは、生物学的な性別ではなく、①「男はこうあるべき」とか②「女はこうあるべき」などと広く認知されている社会的な男女差です。
その上で、①「男は家族を養って一人前」や②「女の仕事は家事育児介護」などは、ジェンダーに基づいた差別です。
そこへきて、上川大臣の発言は、
文脈がとか、ただの比喩だとか、どんな言い訳をしようとも「女性が~しないなら(社会的に)女性ではない」の型にハマっている時点でアウトです。
それは男性が相手でも、「男性が~しないなら(社会的に)男性ではない」の論理構造に当てはまっていればアウトなのです。
いくつか同じパターンでやってみましょう↓
~ジェンダー差別の例~
当然、戦争において「男性だけが徴兵される」のもジェンダーに基づいた差別です。
そこで「何が日本男児」みたいな物言いを許していると、男だけが戦争にいかされて死にます。
戦争反対を訴える男や、徴兵逃れをした男は、「男ではない」と一生バカにされます。
まとめ:上川大臣「女性パワー」なる概念を生み出す
- 切り取り報道の問題点は、恣意的な省略によって無用な誤解や争いを招き、メディアの信頼を失墜させる点
- 「うまずして」発言の問題点は、どう解釈しても女性に特定候補の支持や、出産の役割を押しつけている点
- ジェンダー差別の問題点は、性別によって個人の自由な選択や尊厳や権利が侵害され、男女平等が遠のく点
以上です。
なお本日、上川陽子大臣は「うまずして」発言を撤回しました(2024年5月19日)。
上川大臣によれば、
~「うまずして」⇒「女性パワー」?~
私の昨日の発言についての報道は承知をしております。この発言は、私を古くからご支援いただいている女性支援者を中心にお声がけをさせていただいた個人演説会の最後の発言であります。私自身、2000年の激戦の中で初当選をさせていただきましたが、その際、女性のパワーで私という衆議院議員をうんで、誕生させてくださった皆さんにいま一度、皆さんの女性パワーを発揮していただき、大村知事を誕生させよう、そうした意味で申し上げたところでございます。ただ、私の申し上げました女性パワーで未来を変えるという私の真意と違う形で受け止められる可能性がある、というご指摘を真摯(しんし)に受け止めさせて頂き、このたび撤回をさせて頂きたいと思います。静岡の女性パワーを実感した初当選以来、24年間、女性が新しい変化を生み出すパワーになることを日本中、そして世界中で実感をしております。その思いは初当選以来、全く変わっておりません。むしろ日々、強まっているところでございます。以上でございます。
ソース:上川外相、発言撤回 「真意と違う形で受け止められる可能性がある」 – 朝日新聞デジタル – 2024年5月19日閲覧。
今度は謎の「女性パワー」なる概念が登場。
ええっと……それって要は、「女性特有の力」⇒「出産する能力」の比喩を頑張って言い換えた結果なんでしょうか……?
だって「新しい変化を生み出すパワー」なら男性でも持っているし、わざわざ「女性パワー」というからには「女性パワー」は別のなにかなんでしょう。
↑意味不明ですが、大丈夫この国?
結局、「真意」の部分に「女性が産まずして何が女性」の思想があるから、バカみたいに取り繕うはめになっているんだろうなとしか思いませんでした。
以上、ちなみにみなさんは、「何が女性」だと思いますか?
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