0歳で死んだ子も天寿は全うしています。
~これまでのあらすじ~
↑「寿命」という言葉にはいろいろな意味がありますが、先日の私はこう定義しています。
そして今日の私は、「天寿」について、中絶や流産で産まれてこれなかった子にさえ「天寿を全うした」といえると考えています。
みなさんはどうでしょうか、「寿命」や「天寿」といえば、1度この世に生まれたからにはなにを犠牲にしてでもその生命を最大限延命させることを指す?
~介護疲れによる犯行~
神戸市垂水区の集合住宅で今年5月、同居する母親の首を絞めるなどして殺害したとして、殺人罪に問われた同区の無職の男(69)に対する裁判員裁判の初公判が16日、神戸地裁(松田道別裁判長)であった。男は起訴内容を認め、「母の天寿を全うさせてやれず申し訳ない」などと話した。
ソース:介護していた91歳母殺害 69歳男、罪認め謝罪「天寿全うさせてやれず申し訳ない」 神戸地裁初公判 – 神戸新聞NEXT – 2023年11月19日閲覧。
↑たとえばこういうニュースがあったとして、母親(91歳)は寿命ではなかったし、天寿も全うしていないと思いますか?
いや、私は普通に寿命だと思うし、天寿も全うしていると思いますが。
では以下目次です。
「母の天寿を全うさせてやれず申し訳ない」事件
~「母の天寿を全うさせてやれず申し訳ない」事件の概要~
神戸市垂水区の集合住宅で今年5月、同居する母親の首を絞めるなどして殺害したとして、殺人罪に問われた同区の無職の男(69)に対する裁判員裁判の初公判が16日、神戸地裁(松田道別裁判長)であった。男は起訴内容を認め、「母の天寿を全うさせてやれず申し訳ない」などと話した。
ソース:介護していた91歳母殺害 69歳男、罪認め謝罪「天寿全うさせてやれず申し訳ない」 神戸地裁初公判 – 神戸新聞NEXT – 2023年11月19日閲覧。
さて、今回取り上げる事件は親殺しですが、母親が91歳で息子が69歳……。
WHO(世界保健機関)の定義では、65歳以上は高齢者であり、親子で老老介護をやっている状態でした。
そして息子は「母の天寿を全うさせてやれず申し訳ない」と話していますが、これは裁判用の情状酌量目当ての言い訳ではなさそうです。
~介護疲れ、殺人事件、自殺未遂~
起訴状などによると、男は5月30日午後7時40分~11時40分ごろ、自宅で母親=当時(91)=の首を絞めて窒息死させたとされる。その後、明石市の大蔵海岸で包丁を手に首や手首から血を流した状態の男を県警が発見。調べに「母の介護に疲れていた」と話していた。
ソース:介護していた91歳母殺害 69歳男、罪認め謝罪「天寿全うさせてやれず申し訳ない」 神戸地裁初公判 – 神戸新聞NEXT – 2023年11月19日閲覧。
息子は自宅で母親を殺害したあと、自殺を図っています。
母親には刃物を用いなかったのに、自身には刃物を用い、それでも思い切って死ぬことはできなかったのか手や首に複数の傷。
そして入水自殺を図るためか、海岸まで出向くほど追い込まれていました。
~アホな検察~
冒頭陳述で、検察側は「介護疲れなどが要因だったとしても、やむを得ない犯行だったか」などと指摘。
ソース:介護していた91歳母殺害 69歳男、罪認め謝罪「天寿全うさせてやれず申し訳ない」 神戸地裁初公判 – 神戸新聞NEXT – 2023年11月19日閲覧。
検察はアホなのか、介護疲れがわかっているなら誰がどう見ても「やむを得ない犯行」でしょう。
91歳の老人なんて、自然死や事故死に見せかけて殺害する方法はいくらでもあるのに、わざわざ自分の手で首を絞めて殺害するなんてよっぽど追い込まれた者の犯行です。
息子(69歳)には自身の子どももいて、子どもへの経済支援と母親への介護が重なり、
~常識的な弁護~
弁護側は、子どもの経済支援のために金銭的余裕がなくなり、母親の介護の負担も増えたことなどで「追い込まれていた」と訴えた。
ソース:介護していた91歳母殺害 69歳男、罪認め謝罪「天寿全うさせてやれず申し訳ない」 神戸地裁初公判 – 神戸新聞NEXT – 2023年11月19日閲覧。
息子(69歳)は定年退職の年齢(60歳~)をとっくに過ぎており、肩書きは無職でした。
自殺を図るぐらいですから、少ない年金と貯金でやりくりする生活困窮世帯でしょう。
もちろんその母親(91歳)ともなれば、経済面でも健康面でも自立など望めるはずもありませんが、
~認知症の母親について~
被告人質問では、母親が認知症を患っていたことなどが明かされた。男は「もっと生きたかったはずの母だけを殺し、一緒に死ねなかった」と後悔を口にし、「何年も先になると思うが、社会復帰できるまで母の魂を供養したい」と語った。
ソース:介護していた91歳母殺害 69歳男、罪認め謝罪「天寿全うさせてやれず申し訳ない」 神戸地裁初公判 – 神戸新聞NEXT – 2023年11月19日閲覧。
「天寿」の意味とは?人間が手を加えるのは無理
~「天寿」の意味とは~
てん‐じゅ【天寿】 の解説
ソース:天寿(てんじゅ)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書 – 2023年11月19日閲覧。
天から授かった寿命。自然の寿命。「—を全うする」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
てんじゅ【天寿】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
天から授かった寿命(じゅみょう)。「―を全うする」
⇒命
⇒年齢
- 「天」
- 「自然」
では①「天」とはなにかというと、もちろん空や天気のことではなく、神様的な人間の上位存在のことです。
では①「神様的な人間の上位存在」とはなにかというと、人間の上位存在なので人間には説明不可能です。
が、論理的に考えれば、①「神様」とか①「宇宙人」とか①「運命」みたいな人間の上位存在が人間の寿命を決めているなら、
事故で急逝した人がいても、それは神様が与えた試練だし……。
突然行方不明になる人がいても、それは宇宙人の実験だし……。
息子に殺害される母親がいても、それは運命のイタズラだから、
~介護疲れによる犯行~
その母親は、「91歳で息子に殺害される」という天寿だっただけで……。
あるいは、②「自然」のほうの天寿でしょうか?
でも「自然」というなら、対義語は「不自然」とか「人工」とかになるわけですが、
そこには医療や介護、投薬や手術、あらゆる「不自然」や「人工」の力が働いていませんか?
本当に自然なら、91歳認知症なんて、そうなる前にとっくに弱肉強食で死んでいるでしょう。
母親を殺害した息子は、自分の手で母親の寿命を操作したと後悔しているのでしょうが、
なんなら産まれたときから、産婆(助産婦)や病院のお世話になっているなら、もうその時点で不自然だし。
自然界に粉ミルクとかないんだけど、一生母乳で育ったの?
いや、もちろん人間も自然の一部だし、人間のやることなすことも自然の一部であるという考え方もありますが、
つまり天寿が①「天から授かった寿命」なら、人間がコントロールできない要素なので、どう死んでも天寿は全うしたことになるし……。
天寿が②「自然の寿命」なら、人間は徹底的に自然か不自然な存在であり、人間の行為は天寿の全うに関与できない。
いずれにしても、
~介護疲れによる犯行~
人間が天寿を全うするとしたら、勝手に全うするだけ。
そんなものに勝手に責任を感じている息子、不憫すぎ。
だいたい天寿だかなんだか知りませんが、
「寿命」の意味とは?健康寿命まで生きたら十分
~「寿命」の意味とは~
じゅ‐みょう〔‐ミヤウ〕【寿命】 の解説
1 生命の存続する期間。特に、あらかじめ決められたものとして考えられる命の長さ。命数。「—が延びる」「—が尽きる」「平均—」2 物の使用に耐える期間。また、その限界。「電池の—」「機械に—が来る」
ソース:寿命(じゅみょう)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書 – 2023年11月19日閲覧。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
じゅみょう【寿命】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
命がある間の長さ。転じて、物がこわれずに働く期間。また、その限界。「―が尽きる」「電球の―」「この洗濯機はもう―だ」
⇒命
- 「生命」
- 「物」
①②「寿命」には2種類あり、①「生命」の場合は生きている限り寿命は迎えていないと見なされます。
②「物」の場合は、その使用目的や機能が果たせなくなった時点で、壊れた時点で寿命です。
あの有名な哲学者、サルトルが指摘したように、人間には「使用目的」がないので、
~有名哲学者サルトルの名言~
人間はなにをもって「壊れた」とするのかがわからないし、生きている限りは寿命を迎えたとはいえない刑に処せられている。
たとえ90歳以上だろうが、認知症だろうが、要介護だろうが。
薬漬けで全身チューブまみれでベッドに寝たきりだろうが。
しかしもちろん、私が本記事冒頭で定義した「寿命」は、単なる寿命ではありません。
寿命には「健康寿命」という概念があります。
辞書と厚生労働省の解説を引くと、
~「健康寿命」の意味とは~
けんこう‐じゅみょう〔ケンカウジユミヤウ〕【健康寿命】 の解説
ソース:健康寿命(けんこうじゅみょう)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書 – 2023年11月19日閲覧。
平均寿命のうち、健康で活動的に暮らせる期間。WHO(世界保健機関)が提唱した指標で、平均寿命から、衰弱・病気・痴呆などによる介護期間を差し引いたもの。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2019(令和元)年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です[1]。一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019(令和元)年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています[2]。2001(平成13)年から男性の方が女性より健康寿命は延伸しており、男女差も若干縮小しています【図1】。
ソース:平均寿命と健康寿命 – e-ヘルスネット(厚生労働省) – 2023年11月19日閲覧。
たとえば90歳以上で認知症で要介護なら、もう健康寿命は尽きています。
薬漬けで全身チューブまみれでベッドに寝たきりでも、健康寿命は尽きています。
「天寿」は自然な寿命という話がありましたが、それでいえば、
私はこう思います、健康寿命が尽きるまで生きられたんなら、もう十分寿命じゃない?
もうね、人間としての尊厳を保てないレベルまでボケているなら、それはもう寿命なんですよ。
母親(91歳)を殺害した息子(69歳)曰く、
~認知症の母親について~
実の息子を心中未遂まで追い込んで、そうまでして生きたかった?
あるいは、実の息子を道連れにして、一緒に死にたかった?
どう考えても正常な母親の判断とは思えないんですが、
仮にボケ老人が、現実的な問題を無視して「もっと生きたい」と述べたところで、それはボケているんだから生存本能剥き出しになっているだけです。
子どもを産んだ頃のまともな母親なら、「自分が犠牲になっても子どもには生きてほしい」とは願っても……。
「子どもが犠牲になっても自分は生きていたい」とは思わないのではないでしょうか?
すべての悲劇は、健康寿命が尽きたのに、長生きしてしまったことに尽きます。
母性本能を忘れるぐらい長生きしてしまった結果、子どもを地獄に叩き落とした。
私は我が子にこう言いつけておきたいです、
まとめ:親と子では常に子の命が優先されるべき
- 介護に疲れた息子が、認知症の母親を殺害し、「母の天寿を全うさせてやれず申し訳ない」と後悔する
- が、「天寿」は人間にコントロールできないし、母親は91歳まで健康寿命が尽きるまで十分生きている
- 息子は「もっと生きたかったはずの母」と悔いるが、母親は息子の人生を犠牲にしたくはなかったはず
以上です。
前回の記事では、人間が生きる(とりあえずの)目標に触れました。
より良い未来を作るためには、子どもが必要不可欠だという話ですが、
という根本的な疑問があります。
今回の息子(69歳)にしても、まず母親の介護と子どもへの経済的支援の板挟みになって生活が困窮しています。
その結果選んだのが、母親の殺害と自分の死(未遂)であり、自分の子どもの生活は最後まで守ろうとしているし、
- 親
- 子
今回この息子(69歳)は、①「自分が親」の立場ではその計算を正しく実行しましたが、②「自分が息子」の立場では計算を間違えました。
①②「親子」の命が天秤にかけられたときは、常に②「子ども」が優先されるべきです。
以上、まあでも人間の気持ちは計算できないか……?