ナンバーワンにならなくてはいけないか、ならなくてもいいのかでいえば、ならなくてもいい。
しかし、僕たちはどうしようもなく比べたがりだ。
だからたとえば、『世界に一つだけの花』という曲について語るときも、
などと、比べてしまう。
そんな僕たちに、『世界に一つだけの花』は、「もともと特別なオンリーワン」だと教えてくれる。
正しい。
間違ったことはいっていない、と思う。
なのに僕は納得できない。
なぜか?
それは、僕というオンリーワンが特別だと知っているのは、僕だけだからだ。
世界に一人だけの僕
こんな見出しをつけると、僕の孤独な人間オーラがやばいが、でもそういうことだ。
じつは、僕は世界にひとりしかいない。
ご存知のとおり、いまこの世界には七十億も八十億も人間がいて、なのにそのなかで、「僕」は僕ひとりしか存在しない。
ひとりぼっちだ。
なんて特別なんだ!
それは『世界に一つだけの花』でも歌われているとおり、特別なことだ。
でも待って欲しい。
だれがそれを知っている?
僕は、「僕」が世界にひとりしかいないってことを知っているけど、でも、ほかの人は、そのことを知ってくれているのか?
もっと噛み砕いていうなら、僕は「僕」という意識だとか魂だとかが、世界に七十億~八十億ある肉体のうち、ひとつとしか結びついていないし、だからその唯一の結びつきこそが僕なんだ、という自覚があるけど、でもそのことを知っているのって、僕だけじゃないか?
だって僕は、「僕以外の人」が何人いるのかなんて、知ったことじゃない。
もしかしたら、僕のお母さんは世界中の肉体と繋がっていて、七十億人ぐらいいるかもしれない、僕が知らないだけで。
やばい、ショックすぎる……。
さらにいえば、お母さんっていうか、僕の家族全員、僕以外は中の人が同じで、見ている物とか食べた物とか、五感とか感想とか、全部共有している可能性だってある。
やばい、ホラーすぎる……。
しかし僕以外の人も僕と同じように感じているんだとしたら、その人だって僕がオンリーワンかどうかなんて、知ったことじゃないだろう。
僕がオンリーワンなのか七十億人なのかは、他人にはわからない。
「僕」のことをオンリーワンだと確信できるのは僕だけだろうし、僕が「オンリーワンだ」って確信できるのも「僕」についてだけで、他人については知らない。
だから僕にとって、「僕」というオンリーワンはもちろん特別だけど、でも、ほかの人については、何人だろうがオンリーワンだろうが、「その他大勢」でしかなくないか?
そして立場を入れ替えて、他人が僕を見れば、やはり僕も、「その他大勢」でしかなくないか?
つまり、自分にとって「自分」というオンリーワンは特別だけど、他人から見ると、そのオンリーワンって、別に特別でもなんでもないんじゃないか?
自分から見た「他人」って、幻想でしかなくないか?
他人から見た「自分」って、幻想でしかなくないか?
だから僕らは、他人に「特別なオンリーワン」だなんていわれても、それが正しくても、イマイチ腑に落ちないんじゃないか?
もっと納得のできる「特別」を目指して、「一番になりたがる」んじゃないか?
だって「自分」がオンリーワンだってことは自分にしかわからないけど、ナンバーワンは「自分以外の基準」から見ても一目瞭然だからだ。
だったらナンバーワンを目指すよね。「特別だ」って認められたいんだったら。
ナンバーワンにならなくてもいい
しかし、「だったらナンバーワンを目指すよね」とかいっておいてなんだけど、僕はナンバーワンとか目指していない。
昔から一番より、三番手ぐらいのポジションが好きだった。
漫画でいうと、主人公でもなく、そのライバルでもなく、しかしだれもが認める強キャラ、みたいなポジション。
だから自分を「特別だ」って認めたい気持ちはあるし、他人に認められたい気持ちもある。
けど、だれがどう認知しようが、評価しようが、僕が特別なら特別なんだろうし、特別じゃないんなら特別じゃないんだろう、その現実は変わらない、あるいはどこまでいっても幻想なのかもしれないけど、どっちにしろ認知とか評価とか、どうでもいい、とも思う。
まあでも、どうでもいい路線だとここが終点になるので、やっぱり特別視はされたいって路線で話を続けよう。
でもそれにしても、ナンバーワンはどうでもいい。
だって上で書いたとおり、三番手ぐらいのポジションでも、否、それ以下の順位でも、十分特別になれるからだ。
たとえば漫画「ナルト」でいえば、僕が一番好きなキャラクターは、マイト・ガイ先生だ。
※以下から「ナルト」におけるガイ先生関連のネタバレが入ります。
マイト・ガイ
ガイ先生は、「ナルト」作中の強さランキング、読者の人気投票、ともに十位台前半ぐらいの実力だ。
ナンバーワンどころか、三番手どころか、TOP10にすら入っていない。
では、ガイ先生が特別じゃないという読者はいるだろうか?
いない(断言)。
絶対絶命するはずの禁術を使って絶命しないとか、すごすぎる……。
しかもその頑張りは、
と歌うDJ集団、レペゼン地球にも認められていて、【レペゼン地球】22thシングル『Earth』では、
と歌詞に採用された実績もある。
ちなみに同曲では漫画「ブリーチ」の主人公、黒崎一護と、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志も採用されている。
両者については説明不要だろう。
ガイ先生は、大人気漫画の主人公と、お笑い業界のトップスターと並び称されている。
どうだろう?
主人公でもない、主人公のライバルでもない、三番手ですらない、TOP10にも入っていない。
でも特別だ。
ってことは、別にナンバーワンじゃなくても全然いいよね?
ただし、このことは僕らが「もともと特別」であることを保証してくれるわけではない。
大事なのは努力すること
そもそも『世界に一つだけの花』だって、「一生懸命になればいい」と歌っているし、レペゼン地球だって64thシングル『花鳥風月』にて「頑張った、クソ頑張った」って歌ってるし、ガイ先生だって、体術が花開いたのは努力したからだ。
特別になりたいんだったら、「オンリーワン」なんかに甘えている場合じゃない。
努力しよう。ナンバーワンにならなくてもいいから。
そうすれば、いつかだれかから、
って認めてもらえるかもしれない。図らずとも、人生ってそういうものだ。
THIS IS THE ANSWER.