騙されたと思って、といわれて騙されたら、騙されたことになります。
「騙されたと思って」騙されるのはおかしい?
といった売り文句をだれしも一度は見たり聞いたりしたことがあるはずです。
私も昨夜、バーで飲みながら話していたら、
といわれたばかりです。
さてしかし、この「騙されたと思って」って、
という若干意味不明な疑問が生じますよね。
しかし落ち着いて整理すればわかります。
結論からいえば、(というか本記事冒頭ですで述べましたが)、
ではこの完璧な回答をより完璧にする解説をご覧に入れましょう。
騙されたと思って読んでみてくださいね。
「騙される」の意味を辞書で引いておさらい!
だま・す【×騙す】 の解説
[動サ五(四)]ソース:騙す(だます)の意味 – goo国語辞書 – 2020年8月12日(水)閲覧。
1 うそを言って、本当でないことを本当であると思い込ませる。あざむく。たぶらかす。「人を―・して金を取る」「まんまと―・される」
だま‐す【×騙す】
ソース:岩波 国語辞典 第七版 新版 – 株式会社岩波書店
〘五他〙
①うそを言ったり、にせ物を使ったりして、それを本当と思わせる。ごまかしてそれを信用させる。あざむく。「人を―」「金を―・し取る」
以上、goo辞書と岩波国語辞典からの引用です。
なお「騙す」にはほかにも用法があり、
- 泣く子を騙して寝かしつける(子どもの機嫌を取ってなだめる)
- 車を騙し騙し走らせる(機械の調子をうかがいつつ作動させる)
などと使用されることもありますが、本記事では扱わない用法であるため省略しています。
goo辞書と岩波国語辞典の意味をまとめると、「騙す」とは、
行為だといえます。
そして「騙される」は、「騙す」の受け身であるため、
状態だといえます。
以上が「騙される」ということです。
では次に「騙されたと思って」とはどういう意味なのか考えてみましょう。
「騙されたと思って」とは?発言者の意図は?
これは昨夜、私がバーで話していた人にいわれたセリフです。
私が現実や日常に飽き飽きしていることを話すと、それなら……と、非日常スポットを教えてくれたのです。
ここからは仮定の話です。
私が「騙されたと思って」その心霊スポットを訪問したとしましょう。
しかしいくら探索しても、幽霊も怪奇現象もなにもなかったとします。
なぜなら、私は騙されたと思っていなかったからです。
矛盾しているでしょうか?
「騙されたと思って」行動しているのに、「騙されたと思っていなかった」などとのたまうのは、被害者意識全開の泣き言でしょうか?
いいえ。
たしかに矛盾はしているでしょう。
ただし、それは私ではありません。
↑こいつです。
↑↑こいつが矛盾しているんです。
わかりやすく上記の発言を3つに分解してみましょう。
- 「そこほんとに幽霊出るから」
- 「騙されたと思って」
- 「いってみて」
まず①で、「本当に幽霊が出る」と証言していますね。
次に②で、「騙されたと思って」と証言の信憑性を損ねています。
なのに③で、「いってみて」と行動を促すのは、
していますよね?
「そこほんとに幽霊出るから」→「いってみて」なら筋が通っています。
だって本当に幽霊が出るなら、それは是非ともいってみるべきでしょう。
私は日常に飽き飽きしていて、刺激的なホラー体験を求めているのです。
本当に幽霊が出るなら、騙される余地がないなら、いくしかありません。
なのにそこで、
と、ワンクッションを挟む余地がどこにあるのか謎です。
それこそ怪奇現象です。
なぜ私は「騙されたと思って」行動しなければならないんでしょうか?
そんなのは御免被ります。
当たり前ですよね、だれだって騙されて期待を裏切られたり、時間を無駄にしたりはしたくないものです。
しかし……怒るのは少し待って、落ち着いて考えてみましょう。
本当はなんでも貫く矛もなんでも防ぐ盾も存在しません。
ではなぜ上記で指摘したような矛盾が生じているのかといえば、
という言葉を字義通りにしか捉えていないからです。
つまり、
- 次に②で、「騙されたと思って」と証言の信憑性を損ねています。
↑ここの読解でミスっています。
本当は「騙されたと思って」の発言者は、証言の信憑性を損ねようとしているわけではありません。
逆です。
「騙されたと思って」と発言する意図は、
と言外に自説を補強する方便であって、「本当に騙されたと思って行動しろ」といっているわけではありません。
ですから、
という発言は、一貫して心霊スポットを売り込んでいるだけです。
- 「本当に幽霊が出る」と心霊スポットを売り込み、
- 「騙されたと思って」と心霊スポットを売り込み、
- 「いってみて」と心霊スポットを売り込んでいる、
だけです。
こう考えれば矛盾はありません。
したがって私が「騙されたと思って」、しかし「騙されたと思っていなかった」としても矛盾はありません。
なぜなら私は、話し相手の「騙されたと思って」=「本当に騙す気はないよ」という「売り込みを信じて」行動しているからです。
「騙されたと思って」に含まれる暗黙の了解を含んだ言い回しによって、「うそを言われ、本当でないことを本当であると思わされる、ごまかされてそれを信用させられ」ているわけですから、これを「騙された」といわずしてなんというのでしょう。
まとめ:「騙されたと思って」は営業トーク!
- 「騙されたと思って」は「セールストーク」として用いられる
- 「セールストーク」であれば本当に騙す気はないと見なされる
- ゆえに信じた「セールストーク」が嘘なら騙されたことになる
以上です。
みなさんも実際に、
などとなにかをオススメされて、実際には騙されなかったケースを多々ご存知でしょう。
「騙されたと思って」には字義とは真逆の意味が根付いているということです。
ちなみに「騙されたと思って」普通に騙されたケースもあるでしょうが、ですからそれは普通に騙されただけです(トートロジー)。
以上、「騙されたと思って」についての解説でした。
THIS IS THE ANSWER.