知床遊覧船の沈没事故(2022年4月23日)で、日本人26名が死亡、または行方不明になった事件で思ったんですけど、
この事故を起こした観光会社の社長、責任取らなさそうだな……。
- 沈没した遊覧船「KAZU I」の最終運行責任者は、桂田精一社長
- 沈没した遊覧船「KAZU I」には、安全上の不備が浮上している
- 沈没した遊覧船「KAZU I」の乗員乗客は、おそらく全員が死亡
これだけの条件が揃えば、自分に常識と良識があると信じている人は、「桂田精一社長が責任を取るべき」と考えるかもしれません。
私も一瞬、そう考えかけました。
でも、私は桂田社長の会見を見て、考え直しました。
常識的に考えて、こいつ責任取らなさそうだな……って。
責任者は責任を取るべき?責任の歴史と現実と常識
私が桂田社長の会見を見て思いだした「常識」は、「責任の歴史」です。
犠牲者多数の死亡事故を引き起こして、責任を取らなかった会社の社長。
多額の税金を無駄遣いして、だれも補填しようとしない公務員や当事者。
「責任」「責任」連呼するわりには、責任逃れの代名詞と化した政治家。
まあ、すべて現在進行形(2022年5月)の話なので、現時点で「歴史」と呼ぶのはちょっと大げさかもしれません。
本来であれば、世界中のだれもが知る歴史的大事件で語るべきなのかもしれません。
まあでも、それは歴史研究家とかに任せるとして、あと、
それは過去の話
といって責任をうやむやにするバカ避けに、最近の話で語りましょう。
現実を見れば、この世界は上から下まで、「責任者」とされる人間が責任を取りませんよね?
三幸製菓の社長は死亡事故の責任を取ったか?
2022年2月11日、大手米菓メーカー『三幸製菓』で火災事故が発生し、従業員やバイトなど6名が死亡しました。
三幸製菓は、有名せんべい『雪の宿』などを製造・販売している、業界2位の会社です(亀田製菓の次に大手)。
そんな大手有名老舗メーカーが、6名もの死亡事故を引き起こし、
遺族への合同説明会(非公開)を初めて実施した日付が、4月29日(死亡事故から約2ヶ月半後)。
遺族や司法記者クラブは、公開の記者会見を繰り返し求めていますが、三幸製菓は毎回「検討します」のテンプレ回答のみ(5月13日時点)。
- 一部の犠牲者を、避難訓練に参加させていなかった件については?
- 一部の犠牲者に、労働条件記載の書類を交付していなかった件は?
- 事故原因を解明していないのに、事故現場の建物を取り壊すとは?
- 原因究明とか再発防止とか嘘ついて、うやむやで生産再開するの?
三幸製菓は、全部説明しないまま、勝手に事態の収束を図っています。
ソース:「記者会見を」遺族は怒りと不信感… 6人死亡の三幸製菓工場火災で初の合同遺族説明会 – BSN新潟放送 – 2022年5月13日閲覧。
以下は、三幸製菓に不信感を募らせた遺族の声です。
6人亡くなられたんですけど、本当になんで6人もの大きな命が亡くなったのか、何が本当の原因だったのか知りたい。はっきりした原因が分からないのに、工場を順次立ち上げていくというのが残念というか、分からない
母には、これからゆっくりして、色んなことをしてあげたかった。家族でそういう話はしているが、本当に悔しい
開始するにあたっては、“遺族の意向を汲んで、遺族が納得するという形で”という話だったが
仕事が終わってから、初めてニュースで知った。今まで“遺族優先”と言っていたのは何だったのか、嘘をつかれたというか、ただただ呆れるだけ
CEOに、三幸製菓には『とりあえず、まず謝罪会見を開いて、頭を下げてくれ』と何回も言っているのに。遺族からも望んでいるのに、なぜしないのかというのが本当に悔しくてしょうがない
ソース:6人死亡の製菓工場火災 「まずは謝罪会見を」説明果たさぬ会社に遺族が不信感【新潟】 – FNNプライムオンライン – 2022年5月13日閲覧。
また、別ソースからも遺族の声を引用します。
うちの家族もそうですけど、他の家族も思っているんですけど、世間に対しての謝罪と説明責任が足りていないような気がします。ずるいというか悔しいですよね
私もそれ(※工場再開)をニュースで知った。工場再開するには遺族に伝えてからという話だったので
事故の原因が分かっていないのに、それ(※工場再開)はないと思う
(※工場)再開について、遺族は誰一人いいですよと言っていない
何回も小さな火災とか起こしているのに、なぜ今そういう対策をとっているのか。この時代に“犠牲を払って進んでいく会社”なんてありえないと思います
“安全な準備ができました”ということで皆さんに頭を下げてスタートするのが当然だと思います。遺族が納得して、また一緒に働く従業員の方が同じ思いで同じ方向を見て立ち上げる準備ができているのかなという思いがありますね
ソース:6人が死亡した三幸製菓の工場火災から3か月 遺族「謝罪と説明責任が足りない」 工場の再開は未定 《新潟》 – Yahoo!ニュース – 2022年5月13日閲覧。※括弧補足引用者
さて、こうした遺族への対応を見るに、事故の犠牲者数は知床遊覧船のほうが圧倒的に多いんですが、
事故後の対応は、桂田社長のほうがマシじゃない?
桂田社長は、事故から1週間で公開の記者会見を開いたし、質疑応答の時間も十分に(2時間以上)設けました……かなり稚拙で杜撰だったとはいえ。
三幸製菓が記者会見を開かないなら、あの桂田社長以下の対応だし、あの桂田社長以下ってかなりヤバいよね……。
山口県の職員は税金誤入金の責任を取ったか?
2022年4月8日、山口県阿武町が、1世帯に4630万円の臨時特別給付金を振り込むミスがありました。
この給付金は、コロナ禍関連で困窮している住民税非課税世帯への支援金でした。
本来は、463世帯に10万円ずつ振り込んで終わりのはずが、誤って追加で全額1世帯に振り込んでしまったとのことです。
そして、4630万円を振り込まれた側の世帯主は、
(誤入金した)役場が悪い
もう戻せない
お金は口座から動かし、戻せない。罪は償う
といって、逃走しました。
5月13日時点で、阿武町はこの世帯主と連絡が取れなくなっており、自宅を訪問しても姿は見えず、
雲隠れしてしまったようだ
と、世帯主は「罪は償う」といいながら、罪は償わない方向で話は進んでいます。
ソース:4630万円「返還拒否」は罪に問えない?後味悪い給付金誤入金 – Yahoo!ニュース – 2022年5月13日閲覧。
では、
もしこの世帯主や家族が逃げ切る場合、この4630万円もの税金はだれが補填するのか?
世帯主がいうように、誤入金した役場が悪いのだから、誤入金した職員が支払うべき?
それとも、その職員を管理する町長や副町長、それら役人全体で連帯責任を取るべき?
あるいは、法律を整備していない政治家や、ひいては町民や日本国民全体の任命責任?
結局のところ、当事者が責任を取らないなら、そのしわ寄せは全体へと波及します(いつも通り)。
そして今回、阿武町は件の世帯主と裁判で争う姿勢です。
でも勝訴したところで、過去の例からいえば、4630万円が返ってくる保証はありません。
■罪に問えない?
他の自治体でも同様の問題は起きている。大阪府摂津市では平成30年、市内に住む男性に住民税の還付金を約1500万円を過大に払うミスが発生。市は返還を求めたが、男性側は「市側の誤り。使ってしまったので、返す義務はない」などと拒否した。
事態は法廷闘争に発展し、大阪地裁は昨年10月、男性に全額の返還を命じた。地裁は男性が株取引で生計を立てていたとし、還付金制度などについて「相当深い理解があった」と指摘。受領に「悪意」があったと認定した。摂津市によると判決は確定したが、男性側からの返還はないという。
ソース:4630万円「返還拒否」は罪に問えない?後味悪い給付金誤入金 – Yahoo!ニュース – 2022年5月13日閲覧。
ここでは、阿武町の裁判結果や成り行きは未来のことなので、一旦保留しておくとして。
責任者である阿武町側の言い分に注目してみましょう。
阿武町の副町長は、こう強調したそうです。
これまでの給付で問題が起きたことはなかった
↑この「問題が起きるまで問題は起きていなかった」的な言い逃れ、すごいマヌケですよね。
実際に問題が起きてからその言い訳をして、なんの意味があるんでしょうか?
なぜそれまで運がよかっただけのことを誇っているのか?
たとえば、
虫歯ができてから歯磨きを頑張るバカがいたら、ビックリしませんか?
「これまで歯磨きをしないで虫歯ができたことはなかった」なんて幼稚すぎる言い訳、幼稚園児でもしないのでは?
そんな国では、そりゃあ原発も爆発しますよね。
……で、「復興」「復興」連呼しておいて「復興五輪」なのか「コロナに打ち勝った証」なのかもよくわからなくなった謎のオリンピックまでやった人たちの責任者は、責任を果たしたでしょうか……? 何十兆円もの莫大な税金を注ぎ込んだ結果、福島は復興を果たし、コロナには打ち勝ちましたか……?
日本の安倍晋三前首相は政治責任を取ったか?
ところで、山口県といえば、安倍晋三前首相の出身で知られていますよね。
安倍首相といえば、「責任」の男として、日本人の間では大人気です(どれぐらい大人気なのかというと、通算&連続在職日数最長、合計8年以上も日本のトップを務めたぐらい)。
それでは、みんな大好き! 安倍首相語録をご覧ください。
~今年の1文字について(2006年12月)~
総理にとって、今年の1文字というのは、どういった文字があるでしょうか?
今年は私にとっては、えー、変化の年でありましたね
1文字にするとすれば……?
それは……えー、「責任」ですかね
~森友学園問題について(2017年2月18日)~安倍総理大臣の昭惠夫人が名誉校長に就任する大阪豊中市の小学校の土地が、国から格安で払い下げられた問題について、安倍総理は関与を強く否定しました。
私や妻が関係していたということになればこれはもう、えーまさに、これはもう私が総理大臣も、それはまあ、間違いなく、総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい
~北朝鮮による拉致問題について(2018年6月14日)~自分の責任で何としても北朝鮮に拉致されている全ての国民を日本に取り戻して家族に会わせる
~ロシアのプーチン大統領について(2019年9月5日)~ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう、プーチン大統領。ロシアの、若人のために。そして、日本の、未来を担う人々のために。戦いが終わって、来年で75年です。冷戦の終焉(しゅうえん)からでも、30年。私たちは、1956年に、二度と互いに戦わず、相互に敵とみなさず、平和愛好、善隣の原則に立って関係を築いていくことを堅く約束しました。そして今、私たちは、貿易・経済、対外政策、文化・スポーツといったあらゆる分野での相互発展を、同じ方向へと向かわせるべく歩みを加速させています。北方四島での共同経済活動、人と人との交流も、かつてないまでに進みました。日露の新しい協力関係は、我々二人の努力によって、着実に、その姿を見せつつあります。そしてその先に、平和条約の締結という歴史的使命がある。未来を生きる人々を、これ以上、もう待たせてはならない。ゴールまで、ウラジーミル、二人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。歴史に対する責任を、互いに果たしてまいりましょう。平和条約を結び、両国国民が持つ無限の可能性を、一気に解き放ちましょう。そのほとんど次の刹那、日本とロシアの連結は、地域を変える。世界を、大きく変え始めるでしょう。会場の皆様、ロシアの全ての皆様、日本が皆様の未来に加える新しい、そして大きな可能性に、想像の翼を、はためかせてください。歴史を、一緒に作りましょう。未来を、ともに、拓(ひら)いていこうではありませんか。
~コロナ対策について(2021年4月7日)~例えば最悪の事態になった場合、私たちが責任を取ればいいというものではありません。
ソース1:【今年の一文字】 安倍首相、今年の一文字を問われ、「私にとっては【変化】ですね」 一文字にすると?「それは【責任】ですね」 – YouTube – 2022年5月13日閲覧。
ソース2:総理「関与なら辞任」 国有地“格安”払い下げ(17/02/18) – YouTube(ANNnewsCH) – 2022年5月13日閲覧。
ソース3:安倍首相、拉致被害者「自分の責任で取り戻す」 – 産経ニュース – 2022年5月13日閲覧。
ソース4:令和元年9月5日 東方経済フォーラム全体会合 安倍総理スピーチ – 首相官邸ホームページ – 2022年5月13日閲覧。
ソース5:令和2年4月7日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見 – 首相官邸ホームページ – 2022年5月13日閲覧。
安倍首相は、10年近く日本のトップを務めていた公人なので、書き切れない量の「責任」がありますよね。
日本の貧困化問題や少子高齢化問題にしても、長期政権の間、いったいなにをしていたんでしょうか……。
安倍首相が同じ未来を見ているプーチン大統領なんて、日本に北方領土を返還したり平和条約を締結したりするどころか、ウクライナに戦争を仕掛けて日本と関係悪化しちゃってるんだけど……。
どうすんのこれ……?????
あなたが賢い責任者なら?責任は取るべきではない
以上が、現在進行形の「責任の歴史」です。
で、どうすんのこれ……?
特にどうもしませんよね。
三幸製菓は、今日も遺族の要望に応えるつもりはありません。
山口県阿武町や大阪府摂津市では、今日も返金はありません。
安倍前首相は、今日も元気に「核共有」とか「日銀は政府の子会社」とか無責任な発言を連発しています。
残念ながら、この世界には、「責任者に責任を取らせる」システムが存在しないようです。
だから、責任者が責任から逃げても、特にデメリットがありません。
金銭的な損失が発生するなら、税金で補填して終わりです。
じゃあ、自分でわざわざ責任を取る責任者って、バカでは?
バカです。
したがって、もしもあなたが賢明な責任者なら、責任は取るべきではない。
まとめ:逆に責任転嫁されてから騒いでももう遅い
それではおさらいも兼ねて、ここまでの要点を3点でまとめます。
- 三幸製菓の社長、従業員やバイトを6名も死亡させて、どう責任を取るの?特に責任は取らない
- 山口県阿武町の役人、税金を4630万円も無駄にして、どう責任を取るの?特に責任は取らない
- 日本の安倍前首相、美しい国も日本も取り戻せなくて、どう責任を取るの?特に責任は取らない
以上です。
これが私たちの生きる現実であり、歴史であり、つまりは、
知床遊覧船の社長、乗員乗客を26名も帰らぬ人にして、どう責任を取るの……?
特に責任は取らないでしょう、常識的に考えて。
責任は、正直に取る人間がバカなんです。
この世界は、「正直者がバカを見る」という言葉が初めて登場した日から、なにも変わっていません。
しかし、ではだれも責任を取らないのかといえば、そうではありませんよね。
一旦発生した責任エネルギーは、だれかが取るまでなくならないので、
責任者の責任逃れを許してきた私たち国民全体が、責任を取らされる。
それは、死亡事故という形で、ツケを支払わされるのかもしれないし、
増税や福祉の削減という形で、ツケを支払わされるのかもしれないし、
国力低下や貧困化という形で、ツケを支払わされるのかもしれません。
それを良しとしないなら、私たちにできることは、責任者の責任逃れを許さない社会を一から作り上げることだけです。
せっかく責任者を立てて割高な報酬も支払っているのに、責任者の逃亡を許していたら、意味がありませんよね。
というわけで、
責任逃れをするクズは、みんなでぶっ叩こう!
叩かないなら、自分たちが(事故とか増税とか景気悪化とかのしわ寄せによって)ぶっ叩かれるだけです。
この世は戦いで、潰し合いで、責任の押しつけ合いです。
その証拠に、
知床遊覧船の沈没事故でも、関係各位が責任の押しつけ合いに必死ですよね。
国交省やJCIは、沈没事故の3日前に、「KAZU I」の船舶検査を実施して運行許可も出していました(実際には、海上から通じない携帯電話が通信手段になっているなど、安全性に不備があったにもかかわらず)。
ソース:通信状況悪い“携帯電話”で国の検査通過…船長は「自分のはつながらない」と話し、問われる国の安全確認のあり方 – Yahoo!ニュース – 2022年5月13日閲覧。
まあでも、国はいつも通り、「やってる感」を出すだけでろくに責任は取らないでしょう。
国民だって、ちょっと騒いで飽きたら忘れて、また同じような事故が起きたら騒いで飽きるの繰り返し。
そうして責任がうやむやになる世の中で、賢明な人間にできることは、自分の身は自分で守ることだけかもしれません。
今回も、事故を受けて、全国の海上保安部や運輸局が観光船が緊急点検を実施しました(普段から十分な点検をしているなら、事故が起きてからあわてて点検を実施するような醜態は晒せませんよね)。
見ないふりをしても、知らないふりをしても、罪がないふりをしても無駄だということです。
責任者が責任を取らない世の中では、最終的にはここに行き着きます。
沈没するような船に乗った客の落ち度や責任は?
実際、今回被害に遭ったのは、シーズン前に荒れた海で(つまりほかの観光会社や漁師が船を出していない状況で)整備不良のあった船に乗っていた人たちだけです。
ここで「乗客には責任がない」と言い張っても、そう言い張れるのは他人だけだし、本人たちには弁明の機会すら与えられません。
この現実から得られる教訓は、問題が起きて、責任に追われて追いつかれて、
責任を負わされてから騒ごうとしても、もう遅い。
以上、もちろん私は、自分が当事者になってから社会問題を訴え始める人間のことをめちゃくちゃバカにしています(だって、そいつも自分が当事者になるまで関心を寄せなかった問題なのに、なんで他人が当事者になる前にそいつの話を聞くと思うんだろう? そいつの話を無視する他人は、過去のそいつです。でも私たちは、そういうバカの話を無視しないほうがいい。そうやってバカからも学んで、自分が当事者になる前に騒がなければ、同じようにバカにされるだけだからです)。