日本の東京2020オリンピックや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関連して、最近よく見聞きするようになった言葉があります。
ある計画や作戦に対して、予め「プランB」=「代替案」を用意しておく……といえばたいていの学生や社会人は(新型コロナウイルス以前から)その意味と必要性を理解していたはずです。
が、私は最近「プランB」がじつはまだまだ全然理解もされていなければ用意もされていないっぽい……と感じています。
そこで本記事では、私の復習も兼ねて、
具体例を踏まえて解説します。
ちなみに前者の問いに一言で答えるなら、先述したとおり「代替案」です。
後者の問いに一言で答えるなら、
です。
では目次です。
「プランB」とは代替案であり、「ルートB」への対応策
まず何度も繰り返して申し訳ありませんが、
などと訳されます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に際して、「プランB」の必要性を繰り返し説かれている神戸大学病院感染症内科、岩田健太郎教授の言葉を引用しましょう。
◆(玉砕前提の)万歳突撃です。(旧日本軍の組織上の問題点を分析した名著)「失敗の本質」で指摘されたことの繰り返しです。一生懸命やっている、一致団結していることに価値を見いだし、異論や異説に耳を傾けない。いったん計画を作るとそれに固執し、代替案(プランB)を持たない。
ソース:新型肺炎 岩田健太郎教授に聞く/中 客船、厚労省の「万歳突撃」 – 毎日新聞 – 2020年4月21日(火)閲覧。
また、岩田健太郎教授と対談などを行なっている内田樹氏(武道家、著述家、哲学者。神戸女学院大学名誉教授、昭和大学理事、京都精華大学客員教授などを歴任)も「プランB」支持者です(というか、「プランB」の用意を支持しない人がいるのか、という話なんですが……内田樹氏の実体験によると、いるみたいです)。
しかし、今の日本人はそれができません。過去の失敗のことは忘れて、そこから何も学ばない。不測の事態には備えない。プランAが失敗した場合のプランB、プランCを考えておくということをしない。「参謀本部の立案した作戦がすべて成功したら皇軍大勝利」というノモンハン、インパール以来のメンタリティから何も変わっていません。
ソース:「無策な安倍政権」をいまだに支持し続ける人がいる理由――内田樹の緊急提言 – 文春オンライン – 文春オンライン – 2020年4月21日(火)閲覧。
一旦まとめると、あらゆる計画や作戦の見通しは二択にまで絞ることが可能であり、
- 成功ルート
- 失敗ルート
が存在します。
このとき、「成功ルート(ルートA)」に対応する計画が「プランA」です。
そして「失敗ルート(ルートB)」で発動する対策が「プランB」です。
引用元の両者が揃って言及している「戦争」であれば、そこには大きく分けて、
- 戦勝国ルート
- 敗戦国ルート
が存在します。
そこで「戦勝国ルート(ルートA)」に入ることだけを考えて、「プランA」しか用意していなければどうなるでしょうか?
「敗戦国ルート(ルートB)」に突入したとき、対応する「プランB」がなければ適切に対処することができず、
ことは日本人ならだれもが知っている……そして学習していると信じたいところです。
が、日本人(というか私を含む人間)の学習能力を信じているなら、本記事は執筆されていません。
との名言があるとおりです。
また戦争は現代の日本にとっては遠い昔話であり、歴史に興味がない方も一定数いらっしゃることは承知しています(私もわりと興味がありません)。
では次の項目で、現代日本において現在進行形で起きている実例に基づいて話を進めましょう。
「プランA」しかなかった東京2020オリンピックの失敗
オリンピックにおけるルートAとルートBは以下のとおりです。
- ルートA「予定通りの開催」
- ルートB「延期または中止」
細かく分類すれば、ルートBは延期で、ルートCが中止で、ルートDが無観客開催で……と分岐していくわけですが、大きく成功ルートと失敗ルートに分ければ上記のとおりです。
そして東京2020オリンピックは、「成功ルート(ルートA)」に入ることができず、現在は「失敗ルート(ルートB)」以降へと移行しています。
さてしかし、現在選択されている「ルートB」およびプランB「延期」は、事前に用意されたものではありません。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長や、開催都市である東京都の小池百合子都知事など、大会運営関係者は、
などと繰り返すばかりで、「成功ルート(ルートA)」および「プランA」に全力でこだわっていました。
その結果、速やかに「プランB」へ移行することができなかった日本は、
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策が遅れる
- 無駄に社会の混乱を招く
- 余計に経済的損失を招く
- 世界中の五輪代表選手に肉体的・精神的負担をかけ続ける
など、各界へ多大なダメージを残しました。
そうした日本の現状について、たとえばCNNなどはこう報じています。
上記の動画付きツイートは前者が2020年4月14日、後者が15日です。
簡単に翻訳してまとめると、
という感じです。
注釈として、オリンピックの延期が決定された途端に日本の感染者数(検査数、発表者数)が急増している件は、オリンピックの延期と関連があるのかは不明です。
一応厚生労働省などは否定していますが、厚労省は、
- 新型コロナウイルス関連でデマを発信したり、
- 昨年の2019年にも統計不正が発覚していたり、
- 現在も妊婦さんや国民にゴミを配っていたり、
と、まったく信用に値しない組織です。
ソース1:厚労省が「デマ」ツイート? 厚労相が国会で「おわびしなければならない」 – 毎日新聞 – 2020年4月21日(火)閲覧。
ソース2:厚労省ツイート「誤情報」だった 名指しでTV番組のコメントに反論するも… – Yahoo!ニュース – 2020年4月21日(火)閲覧。
ソース3:どれほど深刻? 厚労省不正統計問題を「超」分かりやすく解説 – ITmedia ビジネスオンライン – 2020年4月21日(火)閲覧。
ソース4:虫混入、カビ付着…全戸配布用の布マスクでも不良品 政府、公表せず – 毎日新聞 – 2020年4月21日(火)閲覧。
特に466億円もかけて、異臭がしたり虫やカビや髪の毛が入っていたりするマスクを手配して、しかも隠蔽まで試みているとかやばすぎますよね……。
という愚痴はさておき。
話が進まないので、ここは一旦厚労省を信じておくとして。
それでも、東京2020オリンピックのせいで新型コロナウイルス対策が遅れた事実は変わりません。
たとえば延期決定の3日前、2020年3月21日に実施されたイベントがこちらです。
ソース: 仙台で聖火見物5万人 感染リスクの数時間行列 組織委、再び密集なら中止検討(東京2020報道特集 オリンピック聖火リレー) – Yahoo!ニュース – 2020年4月21日(火)閲覧。
5万2000人が密集し、500メートルもの列を作りながら、聖火観覧まで数時間待ちというイベントでした。
無論、感染予防の観点からいえば論外です。
しかし、感染予防よりも優先して実施されました。
プランAしか眼中にないアホな国や国民は、こういうことを平気でやります。
最大限のリスクと損失を背負った状態で、強制的に「プランB」へと移行させられたのでした。
まとめ:「プランB」がなくても「ルートB」は存在する
ここで私たちが見なければならない現実は、私たちが想定する未来において、
ということです。
想定される未来は一本道ではありません。
私たちが想定する未来において、あるいは過去を振り返っても、「ありえる未来」や「ありえた過去」はA~Z以上のルートに分岐しているはずです。
そのうちのどれかが現実として確定する、あるいは確定しているわけですが、私たちは事前にどのルートが実現するのかを知ることはできません。
したがって、私たちが未来を完璧に読み切ることができない以上、予想と現実には必ずズレが生じます。
その「ズレて実現する世界」こそが「ルートB」です。
- 私たちが予想し期待する世界=「ルートA」
- 予想とはズレて実現する世界=「ルートB」
ということです。
そして「ルートB」に対応するためには、「プランB」が必要になります。
とはいえ細かいズレをすべて想定したり、対応したりすることは不可能ですから、
- 成功ルート
- 失敗ルート
などと簡略化して対策を練ることになります。
そこでこの対策を怠れば怠るほど、ルートB「ズレて実現する世界」に対応できなくなり、ルートAとプランAに基づいたズレた行動を取り続けるはめになり、最終的にどうなるのかといえば、
させられます。
株式取引やFXでいえば強制決済(ロスカット)、スポーツでいえばコールド負けのような状態です。
強制移行で発動する「プランB」は事前に立案されたものではないため、もはや「プラン」とは呼べないようなお粗末な代物でしょうが、ともかく絶対に方針転換は余儀なくされます。
どれだけ根性論や精神論で粘ろうとしても、この強制移行には絶対に逆らえません。
その逆らえない現実に対して、
- 事前に用意していた次善策で被害を最小限に抑える
- 最後まで最善策を追いかけて最大限の被害を受ける
どちらが賢明なのかは、いうまでもありません。
さて、本記事執筆時点で東京2020オリンピックは2021年の開催を目指していますが、
- ルートA「予定通り開催可能」
- ルートB「中止または再延期」
ちゃんとルートBに対応する「プランB」は用意されているのでしょうか。
用意されていなければ、ふたたびルートBに突入した場合、またもや無駄な混乱と余計な出費、そして強制移行による恥を全世界へと晒すはめになるでしょう。
来年が楽しみですね。
ちなみに私の考えとしては、次回の記事で東京2020オリンピックが開催される根拠を述べたいと思います。
今回は以上。
THIS IS THE ANSWER.