石の上にも十五年とは、ことわざ「石の上にも三年」の誤解を解く格言です。
こんにちは雑記ブロガーの安田尊です。名言情報。「石の上にも十五年」は戦場カメラマンの渡部陽一氏が抱く座右の銘。オリジナルはやじうまカメラマンの山本皓一氏。渡部陽一氏が師匠と仰ぐフォトジャーナリスト。今回はこの「石の上にも十五年」を解説します。
では以下目次です。
「石の上にも十五年」とは?渡部陽一の座右の銘
僕はカメラの師匠である山本皓一先生に何度も言われました。「石の上にも15年」と。どんな小さなことでも、これだけは続けると決めたことを、毎日毎日コツコツコツコツ粘り強く続けていくと、その蓄積が自分の支えになってくれると思いますね。
僕が日記帳に記して座右の銘のようにしているのが、「石の上にも15年」という言葉。前にも触れましたが、写真の師匠である山本皓一先生からいただいた言葉です。カメラマンとして芽が出なくても、コツコツ写真を撮り、ストックし、整理し、飛び込み営業をかける。その地道な作業を毎日、15年間続けていけば、どんな小さなものでも必ず作品として日の目を見るときが来る。この言葉は僕の中のキーワードのひとつです。
お久しぶりです。山本先生に教えられた「石の上にも15年」はいまでも僕のなかに刻まれています。
上記のセリフは戦場カメラマン渡部陽一氏の著作『戦場カメラマンの仕事術』より引用しました。
この「石の上にも15年」は、渡部陽一氏が講演やインタビュー記事などでも「座右の銘」として伝えている言葉です。
『戦場カメラマンの仕事術』では、「座右の銘のようにしている」とやや曖昧に書かれていますが、別の媒体では、
ぼくの座右の銘は山本先生にいただいた「石の上にも15年」という言葉です。
どんな小さなことでも、これだけは続けると決めたことを、毎日毎日コツコツコツコツ粘り強く続けていくことで、その蓄積が自分の支えになるんですね。これはどんな仕事でもいえるのではないでしょうか。
と、言い切っています。
ソース:「また明日からバナナか……」フリーランスとして撮り続ける戦場カメラマン・渡部陽一が語る「1枚でも、ひと言でも『現場』を伝えるために必要なこと」 – クーリエ・ジャポン – 2021年10月20日閲覧。
そして、渡部陽一氏に「石の上にも15年」を伝えた師匠が、山本皓一氏です。
元ネタの山本皓一は「やじうまカメラマン」
山本皓一氏は、「やじうまカメラマン」を自称するフォトジャーナリスト(報道写真家)です。
「やじうまカメラマン」とは?
僕はだから、田中角栄を追ってたときには「お抱えカメラマン」つってやっかまれて、
それから、北朝鮮をずーっと撮ってたときにはね、あいつはたぶん、北朝鮮に興味持つんだから在日だろうって、「在日カメラマン」っていわれて、
で、国境を撮りだしたら今度は「国境カメラマン」……
だからもう、そういうふうなこうひとつの枠のなかに放り込むっていうことはね、僕はもう辟易してるの。
だから、僕は興味があるものは政治であれ戦争であれなんであれ突っ込んでいきますよ。だから、あの、「やじうまカメラマン」つって、自分で(笑)
と、ご本人が説明されています。
ソース:さくらじ#14 平成24年初は、山本皓一・坂東忠信が登場! – ニコニコ動画 – 2021年10月20日閲覧。
そして山本皓一氏は、1985年の独立から約35年、プロのカメラマンとして活動を継続されています。
「石の上にも三年」の意味は?勘違いしてない?
さて、ではなぜ「石の上にも三年」ではなく、「石の上にも十五年」なのでしょうか?
現代人は「三年」を「3年」と読解するし、3年ではヌルいからです。
まず「三年」を「3年」と理解するのは当たり前で、普通は誤解でも勘違いでもありません。
が、そもそも「石の上にも三年」とは、
冷たい石の上でも、3年間も座り続けていれば、石も温まってくるだろう……
つまり成功するためには、長期間の下積みやウォーミングアップが必要なのだ
という意味のことわざで、この「石」とか「三年」とかは比喩です。
文字通り受け取れば、3年間も座らなければ温まらない謎石なんて知りませんし、石の上に座って温める意味もわかりません。
だいたい、成功するまでの年数なんて人それぞれで、何年かなんて一般化はできません。
したがって、
「石の上にも三年」の「三年」は3年間ではなく、
「長い年月」という意味です。
昔の人は現代人ほど数字に厳格さを要求されていなかったので、たとえば「八百万の神々」といって800万ではなく、「とても多く」を意味するような言い回しをよく使います(「三年鳴かず飛ばず」も3年限定ではないし、「鶴は千年、亀は万年」も普通に嘘だし、「八万四千」も仏教用語で「多数」や「無数」)。
ただし、この記事を書いている2021年10月現在でも、
山際経済再生担当大臣は、テレビ朝日などのインタビューに応じ、岸田総理が総裁選で掲げた「令和版所得倍増」は所得が2倍になるという意味ではないとの認識を示しました。
文字通りのですね、「所得倍増」というものを指し示しているものではなくて、多くの方が所得を上げられるような、そういう環境を作って、そういう社会にしていきたいんだ、ということを示す言葉だと。こう、総理は仰っているじゃないですか
などと意味不明な供述をする古い日本人も生き残っているようですが、現代日本で「国語」や「算数」の義務教育を受けた賢明な日本人は真似しないようにしましょう。
ソース:山際大臣「所得倍増は所得が2倍になる意味でない」 – Yahoo!ニュース – 2021年10月20日閲覧。
「戦場カメラマン」が結果を出したのは15年目!
さて、以上のような昔の事情を知らない現代人は、「石の上にも三年」と聞くと、
「3年頑張ればいいんだな!」と思いますよね。
そして大半の人間は、3年頑張っても全然足りない……という現実に直面します。
たとえば渡部陽一氏は、キャリア初期をこう振り返っています。
大学1年生のときから名乗り始めた戦場カメラマンでしたが、そこから10年は写真を使ってもらえませんでした。
ソース:渡部陽一×武田美保の特別対談「やってきたことを究極の形で伝えられるのが講演です」 – 講演依頼.com – 2021年10月20日閲覧。
3年どころか、10年頑張っても結果が出ていない。
ちなみに渡部陽一氏は、大学生の片手間で戦場カメラマンを始めたのではなく、むしろ軍資金稼ぎのバイトと戦場カメラマンを優先しすぎて大学を2回留年しています。
それだけガチっても、石の上にも10年でも、芽が出ていない。
じゃあいつになったら芽が出るのかといえば、15年目です。
現場の戦場カメラマンは僕にとって一番の先生でしたが、もう一人、大きく影響を受けた先生がいます。その先生がおっしゃったのが、“石の上にも15年”という言葉でした。どんな仕事でも、どんな勉強でも、どんな趣味でも、とにかくコツコツコツコツ毎日やめずに続けることこそが大事だと。それこそが、最大の力になる一歩だと。
だから、写真を使ってもらえない中でも、10年やそこらなんて、まだまだフレッシャーズだったのだと気づかされました。やがて15年経って、ありがたいことに写真を大きく使ってもらうことができるようになり、先生に報告に行くとこう言われました。“石の上にも25年”。 とにかくカメラマンとして、今できることをやる。講演会に声をかけてもらったら、講演で世界の子どもたちの声を伝えていく。新聞でも雑誌でも、コツコツコツコツやっていきなさいと。
ソース:渡部陽一×武田美保の特別対談「やってきたことを究極の形で伝えられるのが講演です」 – 講演依頼.com – 2021年10月20日閲覧。
そして15年で足りなければ、25年。
つまり、山本皓一氏のいう「石の上にも15年」とか「石の上にも25年」とかいう数字に本質はありません。
成功するまで積み重ねれば成功する
という、本来の意味での「石の上にも三年」と同じことをいっているだけです。
しかし実際、渡部陽一氏の人生経験でいえば、15年目で石が温まってきました。
それが山本皓一氏の教え、
「石の上にも15年」と合わさって、
「たしかに15年だった」という強烈な成功体験へと昇華されています。
以上が、渡部陽一氏が「3年」でも「25年」でもなく、「石の上にも15年」と伝え続ける理由であると考えられます。
まとめ:タリバンの成功例「石の上にも二十年」
それではおさらいも兼ねて、ここまでの要点を3点でまとめます。
- 「石の上にも十五年」は、カメラマンの渡部陽一氏と山本皓一氏が伝える格言
- 「石の上にも三年」「十五年」「二十五年」という数字に本質的な意味はない
- 「成功するまで継続すれば成功する」がこの格言(ことわざ)の本質的な意味
以上です。
最後にもうひとつ、具体例を紹介して終わります。
2021年8月15日、約20年ぶりにイスラーム過激派組織「タリバン」が、アフガニスタンを制圧しました。
そもそも、私がこの格言にたどり着いた経緯は、最近話題のタリバンについて調べていたからです。
タリバン⇒アフガニスタン情勢⇒渡部陽一氏⇒「石の上にも15年」、という経路でした。
渡部陽一氏は8月16日、Twitterで以下のように伝えています。
こんにちは戦場カメラマンの渡部陽一です。アフガニスタン情勢。アフガニスタン拠点のイスラム組織タリバーンが首都カブールを制圧。事実上、全土を掌握しアフガニスタン政権を奪取。ガニ大統領は隣国に脱出。多数の外国人が国内に残されている状態。約20年前のアフガニスタンに逆行。
で、ここで渡部陽一氏が、
約20年前のアフガニスタンに逆行。
と伝えているのは、2001年の「9.11アメリカ同時多発テロ事件」に端を発する、
「アフガニスタン紛争(2001年~)」以前のことを指しています。
アフガニスタン紛争以前、2001年9月時点では、アフガニスタンはタリバンが政権の座に就いていました。
しかし2001年9月11日以降、タリバンは、オサマ・ビンラディン(9.11の首謀者、当時テロ組織アルカイダの最高指導者)を匿っているとして、
欧米諸国(アメリカやイギリスほか、20カ国以上)や、アフガニスタンの「北部同盟」を主力とする有志連合軍に攻撃されます。
それがアフガニスタン紛争(2001年~)です。
そして2001年11月~12月、タリバン政権は壊滅、「北部同盟」による政権交代。
以降2021年まで約20年間、政権は交代されたまま、対タリバンやアルカイダ残党への戦闘行為や軍事作戦が細々と継続されるのみでした。
しかし2021年5月、アフガニスタン政権の後ろ盾となっていたアメリカ軍やイギリス軍の駐留部隊が、アフガニスタンから撤退を開始。
するとタリバンが攻勢に転じ、
2021年8月15日、約20年ぶりにタリバンがアフガニスタンを制圧しました。
石の上にも二十年
って感じですよね、タリバンからすれば。
そしてアメリカやイギリスからすれば、「石の上にも二十年」を続けられなかったから、失敗した。
繰り返しますが、3年でも10年でも15年でも20年でも25年でも30年でも、年数は本質ではありません。
成功するまで、成功が確定するまで、一生続けろ!
これが「石の上にも○年」の本質です。
以上、「石の上にも三年」「石の上にも十年」「石の上にも十五年」「石の上にも二十年」「石の上にも二十五年」 「石の上にも三十年」 の解説でした!